研究実績の概要 |
これまでPCB胎児期曝露が児の先天異常発生や、生後の生殖機能を妨げる影響を有するという報告があり、成人よりも環境化学物質に脆弱とされる胎児への影響検討が注目されてきた。PCBの一部は生体内で酸化された後、大部分が水酸化PCB(OH-PCB)へ代謝されて速やかに体外へ排出されるとされてきたが、近年OH-PCBはPCB同様生体内や環境中に蓄積することが報告されている。特にOH-PCBは構造上、性ホルモン蛋白との結合力が強いため、本来蛋白に結合する性ホルモンがOH-PCBとの競合で蛋白へ結合できず、体内の性ホルモン濃度バランスを攪乱する可能性が考えられたが、これまでOH-PCBの胎児期曝露が児の性ホルモン濃度へ及ぼす影響について検討した疫学研究はほとんどない。 本研究は、大規模出生前向きコホートを用いて、母体血中OH-PCB濃度を測定し、母のPCB代謝関連遺伝子情報(SNPs)に着目して個人の体内代謝能力差を考慮しながら、臍帯血中の性ホルモン濃度との関連を検討した。 H29年度はH28年度に引き続き、母の妊娠中の保存血液中4-OH-CB146 + 3-OH-CB153、4-OH-CB187各異性体の濃度と、臍帯血中の性ホルモン濃度との関連を検討した。その結果、男児では母体血中4-OH-CB146 + 3-OH-CB153濃度が高いと、臍帯血中Sex hormone biding groblin濃度が有意に低く、女児では4-OH-CB187濃度が高いと、プロゲステロン濃度が有意に低かった。加えて、体内血中PCB、OH-PCB濃度に対する代謝関連SNPs(AhR, AhRR, CYP1A1, CYP1A2, CYP1B1,GSTM1, GSTT1, GSTP1、UGT)別の性ホルモン濃度への影響を検討したが、SNPsによる違いはみられなかった。
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