研究課題/領域番号 |
15K20830
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 真理 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40546488)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨細胞 / exosome / microRNA |
研究実績の概要 |
野生型マウスと骨細胞除去マウスの血清からexosomal microRNAを抽出し、microRNAアレイ解析を行った。マウス骨細胞株MLO-Y4細胞とマウス骨髄ストローマ細胞株ST-2細胞の細胞内および培養上清中からexosomal RNAを抽出しmicroRNAアレイ解析を行った。MLO-Y4細胞培養上清中のexosomal RNAに関してはさらに次世代シークエンス解析を行い、成熟型micro RNAの定量を行った。これらのデータを比較、解析し骨細胞が血中に放出するexosomeに特異的に含まれるmicroRNAの同定を行った。これらの実験・解析から次の結果が得られた。1) 骨細胞除去マウスと野生型マウスの血清から抽出したexosomal microRNAのアレイ解析より、骨細胞除去マウスで増加または減少しているexosomal microRNAを30種類ずつ同定した。2) MLO-Y4またはST-2の細胞培養上清中から抽出したexsomal microRNAのアレイ解析より、MLO-Y4のexosomeに多く含まれる125種類のmicroRNAを同定し、その内85種類のmicroRNAは細胞内よりもexosome内に多く含まれていた。3) 骨細胞除去マウスの血清中exosomeで減少しており、かつMLO-Y4が放出するexosomeに多く含まれているmicroRNAを21種類同定した。一方、マウスの血清中exosomeで増加しており、かつMLO-Y4が放出するexosomeに多く含まれているmicroRNAは7種類同定された。4) MLO-Y4細胞培養上清中から抽出したexosomal small RNAの次世代シークエンス解析によりリードカウント10,000以上のmicroRNAを5種類、1,000-9,999のmicroRNAを22種類、999-95のmicroRNAを38種類同定した。その内のひとつは骨細胞除去マウスの血清中で減少し、MLO-Y4細胞上清中で増加していたexosomal microRNAであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨細胞株MLO-Y4、骨芽細胞様株ST-2の細胞内および細胞培養上清中、ならびに骨細胞除去マウス、野生型マウスの血中のExosome内から抽出したRNAを用いたMicroRNAアレイ解析、MLO-Y4、ST-2の培養上清中のExosomeより抽出したRNAを用いた次世代シークエンス解析を予定通り行った。マイクロアレイ解析データと次世代シークエンス解析データを合わせて、骨細胞が放出するExosome中に特異的なmicroRNAを予定通り同定した。ここまでの結果をとりまとめ論文投稿準備に入ったため、同定したmicroRNAのmimicを作製し、胸腺上皮細胞株TSt-4、脂肪細胞株3T3-L1に導入する実験、およびMLO-Y4の培養上清より抽出したExosomeを細胞培養培地に添加して各種細胞の増殖能の変化および遺伝子発現変化、また分化能の変化を調べる実験はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
exosomal microRNAは競争の激しい研究分野のひとつであるため、マイクロアレイ解析と次世代シークエンス解析のデータを用いた骨細胞が放出するExosome中に特異的なmicroRNAの同定の実験結果を中心とした論文を執筆し投稿準備中である。論文投稿と併せて、同定した骨細胞由来Exosome中に含まれるmicroRNAのmimicを作製し、胸腺上皮細胞株TSt-4、脂肪細胞株3T3-L1への導入実験を行うとともにMLO-Y4の培養上清より抽出したExosomeを細胞培養培地に添加する。mimicを導入した細胞とExosomeを培地に添加した各種細胞の増殖能の変化および遺伝子発現変化、また分化能の変化を調べる。同様に、マウスから分離した胸腺および脂肪組織を培養しmimicの導入およびExosomeの添加を行って、culture維持の可否と遺伝子発現の変化を調べる。 これまでの実験結果から、マウス血中内には多くの臓器から放出されるexoxomeが存在し、骨由来のExosomeを完璧に同定することはかなり困難であることが分かった。そのため、当初予定していた、加齢および卵巣摘出により骨量が減少したマウスの血中Exosomeで同定したmicroRNAの変動を調べるという実験においても、骨以外の臓器由来のExosomeおよびそこに含まれるmicroRNAが変動している可能性が高い。そのためマウスを用いたin vivo実験よりも細胞を用いたextra vivo, in vitro実験を重点的に行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額192,356円は平成28年3月に納品された物品の支払いにあてる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額192,356円は平成28年3月に納品された物品の支払いにあてる。
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