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2015 年度 実施状況報告書

遷移金属元素の内殻励起・内殻イオン化スペクトルの精密計算解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K20832
研究機関北海道大学

研究代表者

中谷 直輝  北海道大学, 触媒科学研究所, 助教 (00723529)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード内殻イオン化状態 / 密度行列繰込み群 / 相対論効果
研究実績の概要

平成27年度は、内殻イオン化・励起状態を高精度に計算するための手法開発と実装を中心に行った。本研究課題では、遷移金属元素の内殻からのイオン化・励起スペクトルの高精度計算解析を行うため、低エネルギー状態を計算せずに高エネルギー状態のみ直接決定できる手法が必要である。そこでまず、当初計画していた密度行列繰込み群の行列要素の量子数を制限する手法を実装し、ベンチマークとして軽元素の内殻イオン化状態の計算を行った。その結果、スペクトル中の相対的なピーク位置を再現することには成功したものの、第一ピークのエネルギーには数eV程度の誤差が見られた。そこで計画案に加えて、harmonic Davidsonアルゴリズムを用いたより一般的な高エネルギー状態計算手法についても実装を行い、同様に軽元素でのベンチマーク計算を行った。その結果、計算の収束性に問題はあるものの、高精度にスペクトルを再現することに成功した。さらに量子数を制限することで得られた波動関数を、harmonic Davidsonアルゴリズムの初期推測に用いることで、計算の収束性を向上させることに取り組んだ。これら開発した計算プログラムを利用して、平成28年度は遷移金属元素への応用と実在系のスペクトル解析を進める計画である。
特に、遷移金属元素の計算解析においては相対論効果を取り込むことが必要となる。そこで、相対論効果を取り込んだ電子状態計算が可能な汎用量子化学計算パッケージへ、当研究課題で開発したプログラムを実装した。汎用パッケージへの実装は、本手法を将来的に普及させる上で大きな意義がある。これら開発したプログラムを利用して、Fe元素の内殻イオン化スペクトルのab initio計算を行い、スピン軌道相互作用によるピーク分裂を再現することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度の計画は、内殻イオン化・励起状態を高精度に計算するための手法およびプログラム開発と、そのベンチマークおよびスペクトル解析の基礎となるデータの算出である。手法およびプログラム開発に関しては、現在までに当初の計画案に加え、より一般化された手法の開発までを完了し、これらを汎用量子化学計算パッケージへ実装することで、相対論効果の取り込みを可能にすること、さらに将来的な普及を念頭においたプログラムを提供することを達成した。また、軽元素および遷移金属元素を含むいくつかの原子・小分子系での応用計算を行い、計算精度の評価や基礎データの算出についても、本年度予定していた研究計画をほぼ達成した。
したがって、現在までに次年度に予定している実在系への応用計算へ向けた準備がほぼ整ったと言える。これらのことから、概ね計画通りに進行している。

今後の研究の推進方策

今後はまず、種々のFe錯体の内殻イオン化・励起状態へ本手法を応用し、実験分野から報告されているXPSやXASスペクトルとの比較を行う。これについては、当初計画していたFeの水和錯体のXASスペクトルに加え、学外の実験研究者との共同研究の準備を進めており、特にFe錯体のXAFSスペクトルの計算解析へ本手法を応用したいと考えている。
また、発展的な課題として計画していたセリウム-ランタン系モデル触媒のXPSスペクトルの計算解析についても取り組む。こちらは固体表面のモデル化が1つのボトルネックとなり得るが、X線分光では基本的に局所的な構造や電子状態を観測できることから、少数原子クラスターモデルによる計算解析を行うことで、有益な結果が得られると期待している。

次年度使用額が生じた理由

今年度の最後に行った相対論効果の取り込みに関連して、3月に参考書籍を購入した。また、今年度得られた研究データの保存用にメモリを同じく3月に購入した。これらにより、当該助成金が生じた。

次年度使用額の使用計画

3月末までに使用済みである。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Princeton University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Princeton University
  • [雑誌論文] Energy dissipative photoprotective mechanism of carotenoid spheroidene from the photoreaction center of purple bacteria Rhodobacter sphaeroides2015

    • 著者名/発表者名
      Sundaram Arulmozhiraja, Naoki Nakatani, Akira Nakayama, and Jun-ya Hasegawa
    • 雑誌名

      Physical Chemistry Chemical Physics

      巻: 36 ページ: 23468-23480

    • DOI

      DOI:10.1039/C5CP03089G

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] QC-DMRG Algorithm on the Tree Tensor Network States2016

    • 著者名/発表者名
      Naoki Nakatani
    • 学会等名
      Tensor Network States: Algorithms and Applications
    • 発表場所
      岡崎コンファレンスセンター(愛知県岡崎市)
    • 年月日
      2016-01-11 – 2016-01-14
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] On the Geometry and Electronic Structures of Iron-Sulfur Clusters: A Density Matrix Renormalization Group Study2015

    • 著者名/発表者名
      Naoki Nakatani, Jun-ya Hasegawa
    • 学会等名
      第65回錯体化学討論会
    • 発表場所
      奈良女子大学(奈良県奈良市)
    • 年月日
      2015-09-21 – 2015-09-23

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-01-27  

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