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2016 年度 実施状況報告書

平面内細胞極性に関する統一的数理モデルの構築

研究課題

研究課題/領域番号 15K20835
研究機関北海道大学

研究代表者

秋山 正和  北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (10583908)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード平面内細胞極性 / 数理モデル / 数値計算
研究実績の概要

平面内細胞極性に関して,1950年代から60年代にかけて分子生物学的な研究が盛んに行われてきた.特にショウジョウバエの翅(ハネ)をモデル生物系とした実験の発展はめざましい.これは,翅表面上に存在する毛(翅毛)に関する遺伝子学的解析や観察が容易であるためである.正常なショウジョウバエの翅毛パターンは翅の根本から先端にむけて一方向に生えそろっている.しかし,ある特定の遺伝子やタンパクの働きを阻害すると,このパターンが異常となることが知られている.それではこのようなパターン形成を司る分子群の動態はどのようなものであろうか.また,その分子群の動態において本質的な働きをする機構はどのようなものであろうか.
我々はこの平面内細胞極性に関して,理論と実験の両面から研究を行っている.既に我々の研究により,PCPの本質部分についてはその一端が解明された(M. Akiyama, et al., Cell Reports, 2014. 8(2): p. 610-621. ).本数理モデルは単一細胞内でのFz/Stbm分子の方向性と強度値に着目して作成された4変数モデルである.非常に簡単な数式であるものの,K. Amonlirdviman等と同様にPCPの一方向性や数々の実験事実を説明することに成功している.さらに着目した分子は翅だけでなく,他の組織でも観測できるため,翅のPCPと複眼のPCPを同時に説明することもできた.これは,本数理モデルがより普遍性の高い特性を備えていることを意味している.
そこで,今年度はこの4変数の数理モデルに関する数理解析を重点的に行った.
これらの研究成果は国内外の主要な研究集会において発表された.また,本研究が契機となり.国内の研究会において3度の招待講演を受けた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在本モデルで提案された数理モデルに対する数理解析を行っている.数理解析の結果,特定の条件下で数式が非常に簡単な1変数モデルへと帰着できることがわかった(数学会において発表済み).この1変数モデルに関しては連続化極限を取ることが可能あることもわかった.また下記のように解を構成し,その解の安定性に関して数値計算を援用することで検証することができた.
解析の結果,細胞を円環状にN層配置し,真ん中の細胞を除外した場合,N=1,2,3においては極性が中心点周りに回転する回転解が存在し,安定であることがわかった.一般のNに関しては未解決問題であるが,数値計算による検証では不充分であるため,直接的な証明を与えることを計画している.
一方で,現実のPCPでは構造欠陥などがなくても,極を形成することがわかってきた.したがって,上記のような円環状の配置による極の安定化機構とは別のメカニズムを探求すべきである.そこで,一様な状況下に於いて,極の発生と維持がどのようなメカニズムにより起こるのかを研究した.そこで,細胞を平面に敷き詰めた状態で回転解を構成し,その安定性を検証した.具体的には細胞数が3,15,36,76のケースにおいて,細胞を敷き詰め解を構成することができた(主要な国内の研究集会で発表済み).この際,有効桁1000桁の無限多倍長演算を用いることで,安定・不安定性を示すことができた.しかしながら,厳密に安定性を証明するためにはあと一歩の状態であるため,これを直接的証明もしくは精度保証付き数値計算法を用いて単著の論文として執筆を目指したい.

今後の研究の推進方策

細胞を平面に敷き詰める方法はいくつか考えられるが,実際の系では,十分に全体の細胞数が多い場合,その敷き詰め方によらず,極が安定に発生するようである.したがって,ある細胞数Zが存在して,そのZより大きい細胞数が平面に敷き詰められた時に回転解Pが存在するかどうかを検証したい.次に,その解Pに対して摂動を与えることで,摂動に関する方程式Qを得ることを目標としたい.そして得られた方程式Qに関して厳密な解析を行うことで解の安定性を検証したい.
もし,上記のアプローチがうまくいかない場合は,精度保証付き数値計算法を用いることを計画しているが,精度保証付き数値計算法に関しては,申請者の理解が及んでいないところもある.そこで,精度保証付き数値計算法に関する方法論を研究し,本研究へ活かしたい.このため,精度保証付き数値計算法に関するエキスパートを招聘し,共同研究を開始したいと考えている.また,得られた結果を用いて,厳密な数学証明へのヒントにしたいとも考えている.

次年度使用額が生じた理由

予定していた旅費が若干安くなり,余剰金が発生したため.

次年度使用額の使用計画

29年度に旅費として使用する計画である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)

  • [学会発表] 細胞極性と細胞移動の数理モデル2017

    • 著者名/発表者名
      秋山正和
    • 学会等名
      数理生物研究会2017
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2017-03-09 – 2017-03-11
    • 招待講演
  • [学会発表] A Mathematical Analysis of Planar Cell Polarity Model2016

    • 著者名/発表者名
      M.Akiyama, T.Ayukawa、M.Yamazaki
    • 学会等名
      H27年度電子科学研究所国際シンポジウム
    • 発表場所
      シャトレーゼ・ガトーキングダムサッポロ(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-12-13 – 2016-12-14
    • 国際学会
  • [学会発表] 毛 の 方 向 が 一 方 向 に 揃 う 現 象 に 関 す る 数 理 モ デ ル2016

    • 著者名/発表者名
      秋山正和、山崎正和、鮎川友紀
    • 学会等名
      第4回アライアンス若手研究交流会
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-11-09 – 2016-11-10
    • 招待講演
  • [学会発表] Tetragonal versus hexagonal tiling of the Drosophila eye2016

    • 著者名/発表者名
      林貴史、秋山正和、佐藤純
    • 学会等名
      12th Japanese Drosophila Research Conference(第12回 日本ショウジョウバエ研究会)
    • 発表場所
      立教大学(東京都豊島区)
    • 年月日
      2016-09-09 – 2016-09-11
  • [学会発表] 平面内細胞極性の数理モデル2016

    • 著者名/発表者名
      秋山正和、鮎川友紀、山秋正和
    • 学会等名
      数理で解き明かす森羅万象
    • 発表場所
      広島大学(広島県東広島市)
    • 年月日
      2016-08-20 – 2016-08-21
    • 招待講演
  • [学会発表] A Mathematical Model of Planar Cell Polarity2016

    • 著者名/発表者名
      M.Akiyama, T.Ayukawa, M.Yamazaki
    • 学会等名
      International Conference: Patterns and Waves 2016
    • 発表場所
      北海道大学(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-08-01 – 2016-08-05

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公開日: 2018-01-16  

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