研究課題/領域番号 |
15K20837
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
中道 莉央 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (30550694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バスケットボール / 球技 / ボール運動 / 歴史 / 教材 / 価値 / ルール |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、①学校体育におけるバスケットボールの教材価値を明らかにすること、②文化としてのバスケットボールの楽しさを味わう実技授業の試案を提言すること、である。目的①に対して、バスケットボールの本質的な教材価値を明らかにするためには、バスケットボールが1891年にアメリカで創案されてからわが国への受容過程と学校体育への広がりを詳らかにする必要があると考えた。そこで2015年度は、1891年から1913年(わが国初の学校体育に関する要目である『学校体操教授要目』の発行)までのおよそ20年間に焦点をあて、明治期、大正期に出版された遊戯書を中心に、学校体育におけるバスケットボールの取扱いに関する国内の基礎的な史料など、課題遂行に必要な資料収集と分析を進めた。 目的②に関して、本研究課題ではバスケットボールの文化性の根拠をルールや技術の史実的変遷に求め、2015年度は国内ではまだ明らかにされていないタイム・アウトの変遷について整理した。具体的には、学校体育におけるバスケットボールの「作戦を考える学習」を支える活動としてのタイム・アウトの可能性を検討する基礎的資料として、1892年から1940年までのルールの変遷に着目し、タイム・アウトがどのような性質や特徴を持っているのかを明らかにした。その結果、タイム・アウトが教育的配慮からプレーヤーの休息時間確保のために導入され、またコート内でプレーするキャプテンにもその請求権が認められていたこと、設定条件を整理したことで公平性の保障と円滑なゲーム運営によりゲームが高度化したことなどを確認することができ、ルールの史実的変遷からみたタイム・アウトは教育的価値や意義を有し、学校体育への応用可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度の研究進捗は、概ね達成できた。その理由として、主に次の3点が挙げられる。1点目は、本研究課題を遂行する上で必要な国内の史料及び資料については、概ね収集することができたことである。2点目は、国内ではまだ明らかにされていないバスケットボールのルール及び技術の史実的変遷のうち、タイム・アウトのそれについて明らかにし、論文にまとめることができたことである(「学校体育のボール運動・球技における素材の歴史的研究:バスケットボールのタイム・アウトの変遷(1892-1940)に着目して」北海道体育学研究第50巻, pp. 93-102.)。3点目は、文化としてのバスケットボールの楽しさを味わう実技授業の試案の提言に向け、ルールの史実的変遷をもとにしたバスケットボール授業(調査期間:2016年2月/対象:鹿追町立上幌内小学校5・6年生)の実践調査を行ったことである。 国外における史料及び資料収集は、先方との調整がつかず研究計画時には予期していなかった状況に難渋が生じて計画を変更せざるを得なかったものもあるが、上述の通り総合的にみて概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度は初年度ということもあり、研究成果が学会発表や論文投稿の水準までには達しなかった点がある。今後は分析を進め、研究成果を関連学会へ発信する準備を進める。また、国外の研究打ち合わせ(研究助言)及び資料収集は、国内外の研究協力者の協力を得ながら、2016-17年度の2か年内で遂行する可能性を探り、課題達成の道すじを立てる。具体的には、以下のように進めていく。
・2015年度に行ったわが国の学校体育におけるバスケットボールの取扱いが記載された明治期、大正期の遊戯書などの資料収集を継続するとともに、これまでに得られた同資料の分析を進める。 ・2015年度に行ったルールの史実的変遷をもとにしたバスケットボール授業の実践調査の結果を分析し、日本スポーツ教育学会での発表(2016年10月)及び論文投稿の準備を進める。 ・2015年度までに得られた成果の総合的考察及び2016年度の国内外の調査や資料収集の準備のため、国内研究協力者との打ち合わせを進める。 ・2015年度に達成できなかったスプリングフィールド大学での研究打ち合わせ(研究助言)及びスプリングフィールド大学とスミス大学での資料収集については、2016年11月(予定)に行えるよう国外研究協力者との調整を行う。また、上記と並行し、2016年度に実施予定であるニューコム大学での資料収集についても調査準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行率は99.6%であり、当該助成金の3,248円は次年度使用額に繰越す範囲内と捉え、概ね適切に執行できたと考える。
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次年度使用額の使用計画 |
当該助成金は、資料収集費(文献複写)に充てることを計画している。
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