本研究課題の目的は、①学校体育におけるバスケットボールの教材価値を明らかにすること、②文化としてのバスケットボールの楽しさを味わう実技授業の試案を提案すること、である。目的達成のため、2015年度はバスケットボールの受容過程と学校体育への広がりを詳らかにするために、バスケットボールが創案された1891年から我が国初の学校体育要目である『学校体操教授要目』が発行された1913年までに焦点をあて、当時の遊戯書を中心にバスケットボールの取扱いに関する史料等を収集し、分析を進めた。2016年度は1896年から1913年までの遊戯書にみられるバスケットボールの目的、コート・ボール・用具・人数等のルールや挿絵等に着目し、ゲーム方法の実態を検討した。本研究課題最終年度である2017年度はこれまでに得られた知見にもとづき、現職教諭の協力を得ながら史実的変遷にもとづいたバスケットボールの実技授業の試案を提言することを計画していた。授業提案に際して、新学習指導要領では「特別な配慮を要する子どもへの指導」についての記述が丁寧に記載され、障がいのある子どももない子どももともに同じ空間でともに運動の楽しさを味わうことを目指した「インクルーシブ体育」が求められている。これらを受け、本研究課題でいう教材価値においても障がいの有無にかかわらず、すべての子どもがバスケットボールの価値を追求していけるような内容を構想する必要があると考えた。そこで、教育関係やアダプテッド・スポーツ関係の学会及び研修会に参加したり、現職教諭や車いすバスケットボール関係者からの助言を得たりして、これからの体育科に求められる技能等や障がいのある子どもへの指導方法の工夫についての情報を収集し、知見を構築した。すべての子どもにスポーツを文化として継承・発展させていくバスケットボール授業を提言するための準備を進めることができた。
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