研究課題/領域番号 |
15K20841
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90708364)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 嗅覚 / レクチン / 組織化学 / 日内変化 / 加齢性変化 / 神経系 |
研究実績の概要 |
本研究は糖鎖修飾の観点から、嗅覚感度のサーカディアンリズムや嗅覚中枢領域におけるニューロンの軸索伸長、神経回路の形成メカニズムの解明を試みるものである。申請者は昨年度までに、マウスの嗅球(嗅覚の一次中枢)から嗅皮質(嗅覚の二次中枢)へ投射されるニューロンにおいて、糖鎖a1-2フコース構造(a1-2Fuc)の量が日内変化していることを明らかにしている。平成28年度は、嗅覚系の投射経路における糖鎖a1-2Fucの局在を詳細に追究し、加えて嗅皮質領域の各層に発現する糖鎖構造をレクチン組織化学によってプロファイリングした。 その過程で、糖鎖a1-2Fucを発現する嗅糸球体(感覚細胞の軸索と投射ニューロンの樹状突起のシナプス部位)の比率が、加齢に伴い減少していることを発見した。糖鎖a1-2Fucは嗅球の正常な発生の必須因子であることが知られているが、成体においてもこの糖鎖が役割を有し、加齢に伴ってその機能が低下していくものと考えられる。 また、嗅皮質におけるレクチン組織化学によるスクリーニングの結果、一部の領域がレクチンVVAと強く反応することを発見した。VVAが結合する複合糖質は明らかではないが、大脳新皮質や海馬領域では、特定の抑制性ニューロンが特異的にVVA陽性のニューロン周囲細胞外マトリックスに囲まれていることが報告されている。嗅皮質内のVVA陽性領域は抑制性の介在ニューロンが豊富に存在する領域と一致していることから、新皮質領域などで見られるVVA陽性細胞外マトリックスとの関連性の解明が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の推進方策として4つの軸を据えていたが、そのうちの2つ、「(3)嗅球におけるa1-2Fuc 量の加齢性変化を詳細に解析する」と「(4)嗅皮質領域における糖鎖構造をスクリーニングする」に関して、目標に到達したといえる。加えて(4)の副産物として、嗅皮質領域においてレクチンVVAが特異的に結合する領域を発見し、本研究の拡張において重要な知見となった。また「(2)嗅球の神経細胞におけるa1-2Fucの微細局在を、透過型電子顕微鏡を用いて解析する」に関しても、予備的ではあるが順調に解析が進んでいる。しかしながら、「(1)NCAMに関して、a1-2Fucとポリシアル酸構造との相関を分子生物学的手法で解析する」については十分な成果が得られておらず、次年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の成果を踏まえ、以下の3点を軸に研究を推進する。 (1)昨年度試みた、神経接着分子NCAMにおけるa1-2Fucとポリシアル酸構造に関する分子生物学的解析について、手技を再検討・改善する。 (2)嗅球におけるa1-2Fucの微細局在をさらに詳細に解析する。 (3)嗅皮質領域におけるVVA陽性領域およびVVA陽性細胞の特性を組織化学的に解析する。
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