耕作放棄地について再利用方法の検討を行った。その結果、まず、太陽光発電施設においては施設の管理強度に反比例して生物多様性は高くなった。具体的には、砂利やアスファルトなどにより整備した施設においては多くの生物分類群で種多様性および個体数が著しく低かった。一方で、土の状態で整地している施設においては植物の多様性が高くなり、それに応じて他の生物分類群の種多様性や個体数も増加した。また、土の状態で整地している施設の中では、定期的に除草や刈り取りを行う施設よりも、家畜(ヤギ)を放牧している施設の方が野生生物が豊富になった。また、管理に関わるコストは、上記生物多様性の状態を負の関係にあった。このことから、太陽光発電施設において施設管理には家畜等人による管理コストを低下させることと生物多様性保全は両立可能であり、家畜による施設管理は、今後増加する太陽光発電施設において十二分に活用可能な手法であると示唆される。 この他、耕作放棄地は本来獲得可能な農作物を失っているものの、多くの草地性鳥類の生息場を提供することで、周囲の耕作地において害虫捕食機能を増加させていた。このことから、耕作放棄地はその存在自体が生態系サービスを有しており、耕作放棄地の適切な管理は、生物多様性保全と農業活動へのサービス向上というwin-winな関係を有している可能性が示唆された。 上記のように、耕作放棄地の管理においては、経済性と生物多様性保全は、必ずしも相反する負の関係ではなく、今後の経済活動の促進の上でも達成可能であることが期待される。
|