研究課題/領域番号 |
15K20847
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
乾 明成 弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (20746391)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔機能 / 健康寿命 / 残存歯数 / 嚥下 / フレイル / 運動機能 / サルコペニア / 栄養 |
研究実績の概要 |
青森県弘前市岩木地区の一般成人1,088名を対象に、残存歯数と健康寿命(運動機能と食習慣)の関連性を疫学的に調査・検討した。悪性腫瘍、脳卒中、虚血性心疾患および調査項目に欠損値を有する対象者を除外し、20歳以上80歳未満の521名(男性197名、女性324名)を対象とした。運動機能の評価はサルコペニアに関わる10m歩行速度、握力、筋肉量(生体インピーダンス法)、食習慣は簡易式自記式食事歴法質問票(BDHQ: Brief-type self administered diet history questionnaire)を用いた。 口腔内環境は現在歯数、歯周疾患(CPITN)、う蝕歯数の診査、反復唾液嚥下テスト(RSST: Repetitive Saliva Swallowing Test)を実施した。生活習慣や既往疾患、口腔機能の低下(基本チェックリストの「嚥下、咀嚼、乾燥」等)は自己記入式の質問用紙を配布し、健診当日に個人面接を行い回答を確認した。 これらの調査結果に対して、重回帰分析解析(ステップワイズ法)を実施した。その際に交絡因子として年齢、BMI、生活習慣(運動、飲酒、喫煙)、既往歴の有無(糖尿病、高血圧)、配偶者の有無、学歴を調整した。説明変数を現在歯数、従属変数を10m歩行速度、握力、筋肉量、RSST(回数)、肉類と魚介類の摂取量とした。その結果、有意差が10m歩行速度(男性: p=0.005、女性: p=0.001)、握力(男性: p=0.013)、筋肉量(男性: p=0.036)、RSST(男性: p=0.004)、魚介類の摂取量(男性: p=0.018)で認められた。以上の結果から、現在歯数の喪失により魚介類の摂取量が減少し、嚥下機能や歩行速度の低下を招く老化モデル(口腔に関わるフレイル)が考えられ、今後の縦断研究での課題と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
残存歯数と健康寿命の横断研究として上記成果が得られ、全体の7割は目標が達成されていると考える。これらをベースとして、残存歯数以外の口腔内環境(歯周疾患、う蝕歯数、口腔乾燥、顎関節の異常、口腔衛生習慣)と健康寿命の関連性を現在解析中である。歯周疾患と筋肉量、咀嚼状況と残存歯数などの関連性で統計結果が得られ、現在考察を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後はデータの集計を迅速化し、より多くの統計解析を行う。また、残存歯数を中心に行ってきた解析を他の口腔内環境(歯周疾患、う蝕歯数、口腔乾燥、顎関節の異常、口腔衛生習慣)に拡大することで、研究成果を拡大する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在も昨年度の健診結果を継続して解析中であり、データの整理などで費用がかかるため。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究の立案時よりも検査項目が増加したため、書類のファイル等で使用する予定である。
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備考 |
・「健やかに老いる」歯と口腔機能.乾 明成、高橋一平、他:2015岩木健康増進プロジェクト・プロジェクト健診結果説明会 岩木保健福祉センター 2015年9月7日 ・歯と口腔が全身の疾病や健康に与える影響とセルフケアの提唱.乾 明成、高橋一平、他:2015年度岩木健康増進プロジェクト研究成果報告会 2016年2月26日
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