本研究の目的は,関数から方程式へと展開する数学教育カリキュラムを開発し,その効果を明らかにすることであった。このために,教材内容の構成原理を特定するとともに,その原理に基づいたモデル単元を生徒の実態を踏まえて構築し,二次関数から二次方程式へと展開する授業実践を行ってきた。さらに,一次方程式に関する生徒の理解の実態に関する調査問題を作成・実施し,その結果を口頭発表としてまとめた。 研究の最終年度である平成29年度には,昭和10年代に作られた一次関数を中心とした構成を持つ国定教科書『中等数学』の分析を着実に進めるために,一次方程式を中心として作られていた時期の教科書,すなわち,五種検定教科書の分析を行い,この結果を研究ノートとして投稿し数学教育史研究に掲載された。この研究を踏まえて,『中等数学 第一類』にみられる一次関数から一次方程式へと展開する教材内容の構成を分析し,一次方程式に関する段階的な構成,すなわち,逆算によって解決を図る段階と,両辺に文字のある方程式を等式の性質や移項を用いて形式的に処理する段階という2つの段階が教科書に具現化していたことを特定した。後者の段階においては,一次関数先行によるグラフの活用が伴っており,「関係観念の涵養」を志向しつつ方程式の理解を深める展開であることがわかった。 この一次方程式に関する段階的な構成は,今日の数学教科書に用いられていない構成であり,改善の視点となり得ると考える。なお,この分析の成果は,平成30年2月の投稿を経て,平成30年6月に行われる日本数学教育学会春期研究大会において発表予定である。また,実践授業に関する成果,調査問題を改善して実施した生徒の実態に関する調査結果を論文にまとめて発表する予定である。
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