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2015 年度 実施状況報告書

建物群破壊確率モデルの高精度化

研究課題

研究課題/領域番号 15K20849
研究機関岩手大学

研究代表者

柳川 竜一  岩手大学, その他部局等, 助教 (70649095)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード東日本大震災 / 建物被害 / 津波 / 数値モデル
研究実績の概要

建物群破壊確率モデルを高精度化するにあたり,より精度の高い津波数値モデル構築は重要となる.岩手県の海岸線は,南北300kmを超え広域にわたり集落が点在しており,多領域でのモデル構築が必要となる.平成27年度は,太平洋東北沖~岩手県南部に位置する大槌町に焦点を絞ったモデル構築および数値計算の実施を行った.
数値モデルは入手可能な複数の波源モデルを利用し,再現性は,沖合での観測津波波形や航空写真より読み取った津波遡上の最大範囲,陸上域での観測浸水高,現地住民の証言を参照したヒアリング調査資料から総合的に判断した.複数の波源モデルより定性的な再現性を比較したところ,中央防災会議モデルが岩手県沿岸域では再現性が高く,本検討での計算精度は,相田(1978)の評価指標であるK値が1.00,κ値は1.15が得られた.
津波シミュレーションの結果,大槌町安渡地区では,地震発生後29分経過時に津波が海岸線に到達し,34分経過時に高さ6.4mの防潮堤を越流した.そして約4分が経過した38分後には防潮堤内側の低地全てが浸水した.その後も繰り返し防潮堤高さを上回る津波が来襲し,低平地は長時間にわたり浸水被害を受けた.大槌町吉里吉里地区では,地震発生後25分経過時に津波が海水浴場に到達し,28分経過の時点で海水浴場背後の高さ6.3mの防潮堤を越流した.水塊はより地盤高が低い3丁目側から浸水が始まり,2丁目低平地側へと拡大した.第2波目でより広範囲の浸水となり,37分経過時に津波は最も高い標高20m付近に達した.安渡地区と吉里吉里地区とでは直線距離で2km程度しか離れていないものの,津波到達の時間や最大遡上高さには大きな違いがあることが明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成27年度は,できるだけ最新の津波計算を行うための水深および土地利用に関する公的データ収集や波源モデルの入力値作成,津波数値モデルの作成・利用とその適用可能性について多くの時間を費やした.
岩手県の沿岸域には多くの集落が点在しており,本検討でも最小計算領域は25カ所を想定している.従って,すべての領域において標高・土地利用・海岸保全施設の有無とその高さについての入力ファイルを作成するのは時間がかかることが想定されており,それら解析結果を利用した建物群破壊確率モデルの構築には時間がかかると予想していることから,当初予定のスケジュールをやや下回っていると判断した.

今後の研究の推進方策

平成27年度に実施した作業を引き続き継続し,平成28年度上期には詳細(10m解像度)領域での津波数値モデル構築および計算を実施する予定である.本検討により来襲津波の波向きや海岸線への到達,海岸保全施設越流のタイミング等が詳細に把握することができるので,建物群破壊確率モデル修正に向けた基礎資料を蓄積することも期待される.
そして,既存の建物群破壊確率モデルの修正を行い,実際の建物被害との比較を実施する予定である.
また,東海・東南海・南海地震を対象とした津波モデル構築を検討しており,岩手県と同様の地理的傾向を有する沿岸地域を対象とした推定被害確率を提示することにも取り組む予定である。

次年度使用額が生じた理由

津波計算データ構築作業の開始が予定よりも遅れたため,人件費・謝金の実施が想定よりも少なく,次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

平成28年度では,当初予定どおり津波計算データ構築作業の人件費・謝金の支出を実施して作業の完遂に努める.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Tsunami Inundation Area and Run-up Height in the Iwate Coastal Region Following the Great East Japan Earthquake as Estimated from Aerial Photographs and Digital Elevation Data2016

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Yanagawa, Shuzo Koshino
    • 雑誌名

      Natural Hazards

      巻: 82-3 ページ: 2051-2073

    • DOI

      10.1007/s11069-016-2285-1

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] The Development of Building Group Destruction Probability Model Based on the Experience of the Great East Japan Earthquake Tsunami2016

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Yanagawa
    • 学会等名
      The 35th International Conference on Coastal Engineering
    • 発表場所
      Istanbul, Turkey
    • 年月日
      2016-07-17 – 2016-07-22
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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