研究実績の概要 |
タバコの煙には数千を超える化学物質が含まれ、そのうち数百種類以上が発がん物質を含む有害物質である。タバコの構成主成分の1つであるニコチンは、依存性の観点から多く研究がなされてきたが、腫瘍形成、発がんへの影響は明らかにされていない。そこで本研究において、ニコチン自体が、口腔がん細胞の増殖や分裂、分化におよぼす影響について一貫して実験を行ってきた。 昨年度までに、口腔がん細胞の増殖や分裂、分化におよぼす影響について口腔がん細胞を用い、ニコチン刺激による口腔がん細胞への影響について、ウェスタンブロット法を中心とした分子生物学的手法を用い解析を行ってきた。ニコチン自身には発がん性はないものの、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)を介して上皮成長因子受容体であるEGRFのリン酸化を誘導し、その下流の分子促進因子活性化タンパ ク質キナーゼ(MAPK)のサブファミリーであるERK1/2(p44/42 mitogen-activated protein kinase)を活性化することを確認した。また、細胞シグナル伝達に重要な役割を果たすAKT(protein kinase B)についても解析し、ERK1/2と同様にニコチンによりリン酸化が誘導され、インヒビターを使用することで、そのリン酸化シグナルが抑制された。細胞増殖シグナルを活性化し、ニコチンが口腔がん細胞の増殖・分裂促進に補助的に働く可能性を見出した。 以上、これまでに得られた一連の結果のまとめを最終年度として行い、得られた知見を国際誌(Biochemical and Biophysical Research Communications. 2019, 509(2),514-520)にて公表した。
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