研究課題/領域番号 |
15K20855
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笠松 真吾 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80738807)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | メチル水銀 / 活性イオウ分子種 / 活性酸素 / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
メチル水銀(MeHg)は、強力な神経毒性を示す外因性親電子物質であり、酸化ストレス誘導を介した神経毒性を示すことが報告されている。しかし、その毒性発現機構には未だ不明な点が数多く残っている。本研究では、MeHgの化学特性に注目し、その毒性発現の分子機構と予防法の解明を目指している。本年度の研究成果を下記に示す。 各標的分子特異的蛍光プローブおよび抗体を用いた蛍光顕微鏡解析によって、MeHg曝露後の小脳顆粒神経細胞内において活性イオウ分子種および8-SH-cGMP産生が減少する一方で、活性酸素種とその下流シグナル分子である8-ニトロ-cGMP産生が増加することが確認された。さらに、下流の分子機構について解析を行った結果、MeHg曝露によって8-ニトロ-cGMPシグナルのエフェクタータンパク質として知られるH-Rasタンパク質がS-グアニル化および活性化し、その下流分子であるERKタンパク質も活性化していることが確認された。活性イオウ分子種ドナーを前処理した細胞群について蛍光顕微鏡解析および細胞生存率アッセイを行ったところ、MeHg単処理群に比べ、MeHg曝露による活性イオウ分子種の減少および細胞死の軽減が認められた。 これらの成果は、MeHg曝露は、活性イオウ分子種による細胞内レドックスシグナル制御機構を破綻させることで、それまで負に制御されていた内因性親電子物質である8-ニトロ-cGMPシグナルが活性化し、神経細胞毒性が惹起されることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度当初計画していた各標的分子特異的プローブおよび抗体を用いた蛍光顕微鏡解析において、MeHg曝露によって活性イオウ分子種および8-SH-cGMP、8-ニトロ-cGMPの細胞内産生が変化することを明らかにした。また、MeHg毒性の分子機構を検討する過程で、8-ニトロ-cGMPの下流分子であるH-Rasタンパク質がMeHg曝露によって活性化していることを明らかにした。以上のことから、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
モデル動物にMeHg投与を行い、その動物組織内における活性イオウ分子種と8-SH-cGMP、8-ニトロ-cGMPの生成動態について解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験に使用する試薬、消耗品などの物品費が当初の予定よりも少ない額で目的を達成することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
動物および細胞を用いたMeHg曝露による活性イオウ分子種および8-SH-cGMP、8-ニトロ-cGMP産生への影響の解析実験、MeHgの標的ポリサルファ化タンパク質の同定のためのプロテオミクス手法を用いた網羅的解析実験に関する試薬、消耗品などの物品費に使用する。また、研究成果を論文にまとめ投稿するための英文校正、論文投稿費用として使用する。
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