明治後期から大正期に至る宗教概念の変遷と成立事情について、元良勇次郎の思想を分析対象として、考察した。元良は、一九〇〇年年より活発化する宗教と教育の衝突論争で、人間の一面として切り離すことの出来ないブラックボックスとして、宗教的領域の存在を認めている。このような発想の原点は、宗教理解と科学的探究を両立させていたJ.T.ギュリックからの感化と、当時勃興していた精神物理学からの影響であることが分かった。 また、人間の知性以外の意志や感情面を宗教的心性として担保する元良の姿勢が、一九〇〇年以降に思想形成をする知識人階級に継承されていたことが確認できた。
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