研究課題/領域番号 |
15K20870
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
片岡 駿 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50737278)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 確率的画像処理 / 確率伝搬法 / マルコフ確率場 / Permutohedral Latice |
研究実績の概要 |
本研究計画は非線形フィルタ理論の考え方に基づいて (1)非線形フィルタの特徴を兼ね備える確率的画像処理モデルの構築 (2)非線形フィルタの計算法を基にした,確率モデルからの効率的な推論法の開発 (3)統計的機械学習理論を用いた確率モデルの統計的パラメータ推論手法の開発 の3点を主な研究テーマとして研究をおこなっている. 平成27年度は,画像のノイズ除去問題という画像処理の最も基本的な問題を題材として,確率的画像処理でよく使用されるマルコフ確率場と呼ばれる確率モデルに対して非線形フィルタの考え方を適用し,従来モデルの拡張を試みることで,(1)および(2)のテーマに関する研究を中心に取り組んだ.その結果,ノイズ除去で用いられるマルコフ確率場の確率モデルに確率伝搬法という確率的な推論手法を組み合わせた従来の確率的画像処理モデルに対しても,非線形フィルタの考え方を取り入れることで,かなりの高速化が可能なことが明らかとなり,非線形フィルタの考え方を取り入れた確率伝搬法の効果的な計算法を提案することができた.この計算法は,今のところ,本研究計画で目的としていた(1)の確率的画像処理モデルに対するものでは無いが,今回提案した確率伝搬法の計算法は非線形フィルタの特別な場合に対する計算法を利用したものであり,より一般的な非線形フィルタの計算法を利用することで,今回の計算法を(1)のテーマで目的としている非線形フィルタの特徴をもつ確率モデルに対する確率的推論法へと拡張することは十分可能であると考えられる.今後は今回提案した確率伝搬法の効率的な計算法の適用を視野に入れつつ,(1)のテーマで目標としている具体的な確率モデルの構築と(3)の効率的なパラメータ推定法の開発を中心に研究を遂行していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
画素の値が隣接画素間で大きく差がある場合にフィルタリングの効果を小さくするという非線形フィルタの特徴を確率モデルで表現することが容易ではなく,目的の一つであった非線形フィルタの特徴を兼ね備える確率的画像処理モデルの具体的な定式化までは至らなかった.しかしながら,画像の各画素を色領域で分割し各領域ごとに確率モデルを考えることによって,この問題の解決を可能とする手がかりが既に得られており,この確率モデルの構築に至るまではあと一歩のところまで来ていると考えている.そのため,本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度で得られた知見を手がかりに,非線形フィルタの特徴を兼ね備える確率的画像処理モデルの具体的な定式化を行う.本年度で提案した非線形フィルタの考え方を基にした確率伝搬法の計算法は,ここで目標としている確率モデルに対しても適用・拡張が十分可能なものであり,確率モデルの定式化後には本年度の確率伝搬法の計算法を適用し,提案モデルの画像処理能力を定量的に評価する.その後,従来の研究計画通りに統計的機械学習理論を基にした確率モデルのパラメータ推定法の開発に着手する.
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