研究課題/領域番号 |
15K20872
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
王 欣 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (90610626)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 地震波干渉法 / 波動伝播理論 / 上部構造の各層速度低下 / 常時微動記録 / 各層の被害定量評価 |
研究実績の概要 |
本研究では、超高層ビルのヘルスモニタリングの高度化(高密度化と広域化)を目指し、地震計が設置されてない超高層ビルでも簡単な観測機器(ペアセンダー)で常時微動を測定し、逆重畳法によりビルの各層に伝播するせん断波の速度を抽出する手法の適用性および適用条件を2次元フレームモデルおよび実観測データの解析に基づいて検討した。 (1)各層に曲げばねとせん断ばねが設置され、層毎のせん断モードと曲げモードが再現できる2次元フレームモデルを用いて、モデル1:建物全体は曲げ―せん断モード;モデル2:低層部分は曲げモード、この上は曲げ―せん断モード;モデル3:中間層は曲げモード、その他は曲げ―せん断モードで振動して、せん断波の境界条件が異なる三つのモデルを構築し、振動モードが異なる場合、せん断波の反射、透過および干渉現象を数値セミュレーションして、振動モードが異なる場合、せん断波速度の抽出の有効性を予備的検討を実施した。 (2)超高層ビルの常時微動記録には、伝播経路(高さ)が長いので風や人間活動等により生じたノイズが多く混入された時にせん断波伝播時間を精度よく抽出するため、必要な観測技術およびデータの整理手法を検討する。常時微動観測記録から抽出したせん断波伝播時間を地震記録およびモデルから抽出した結果と比較して、ノイズ成分の相互相関性が低いという特性を利用して、精度の良い解析手法を開発し、観測機材の感度と分解能によってせん断波速度の抽出に対する常時微動観測に必要な機材の最低限な観測能力を解明した。 研究成果は、日本建築学会の権威学術誌に搭載された。 (常時微動の鉛直アレイ観測に基づく超高層ビルにおける1次元波動伝播解析および層間せん断波速度の抽出、王欣、正木和明、 入倉孝次郎、 源栄正人、 久田嘉章、日本建築学会構造系論文集、第80巻、第718号、pp. 1859-1868, 2015年12月)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画の通りで実施した。
(1)振動モードが異なる層の境界でせん断波の反射、透過および干渉現象を曲げ―せん断フレームモデルを用いて数値セミュレーションにより解明することが完成した。 (2)ノイズが混入された相関性が低い常時微動記録から、せん断波伝播時間を精度よく抽出するため、必要な観測技術およびデータの整理手法を検討することが完成した。
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今後の研究の推進方策 |
常時微動観測に基づく建物の層間で伝播するせん断波の速度の変化により層毎の損傷を定量的に評価する手法を、振動モードが複雑な超高層ビルの損傷評価や耐震改修・補強を実施するに当って、振動モードが異なる場合、層の境界におけるせん断波の反射、透過、干渉現象を数値シミュレーションにより完全に明らかにした。平成28年度に構造材料、構造形式、低層棟および制震と免震装置の有無により振動モードの解析およびせん断波速度の抽出手法の有効性と適用限界を観測実例と数値解析結果の比較により解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に、構造材料、構造形式、低層棟および制震と免震装置の有無により全部で24棟の超高層ビルの常時微動を観測し、逆重畳法により解析されたせん断波の反射、透過と干渉を2次元フレームモデル1~3の数値解析結果と比較して、それぞれの振動モードを解明し、層毎のせん断波速度を抽出する。波動干渉が存在する場合、せん断波伝播時間の抽出への影響および振動モードが異なる場合、せん断波速度の抽出手法の有効性と適用限界を24棟の超高層ビルの常時微動観測に基づいて実証する。
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次年度使用額の使用計画 |
時微動観測および観測計画についての打ち合わせや結果報告等の費用を旅費として計上している。常時微動観測は学生の協力が必要となるため、人件費として計上している。観測機械は観測地に運搬することに関する費用はその他として計上している。
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