研究課題/領域番号 |
15K20876
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井田 智章 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70570406)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 活性イオウ分子種 / 活性システインパースルフィド / 8-ニトロ-cGMP / ポリスルフィド / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
活性酸素と一酸化窒素により生成するニトロ化環状ヌクレオチド 8-ニトロ-cGMPは、酸化ストレス制御シグナル分子として機能している。最近、研究代表者らは活性イオウ分子種(活性システイン(Cys)ポリスルフィド)が8-ニトロ-cGMPを8-SH-cGMPに代謝することでシグナル機能を制御することを見いだした。本研究では、Cysポリスルフィドの高精度定量解析法を構築し、酸化ストレス条件下における活性Cysポリスルフィドと8-ニトロ-cGMPの細胞動態解析、細胞機能解析を行うことにより、両者のクロストークを介した新規酸化ストレス応答の分子メカニズムを明らかにすることを目指した。 本年度は、生体内Cysポリスルフィドの質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた高精度な定量解析を行うため、従来のmonobromobimaneの代わりに、ヨードアセトアミド誘導体をCysポリスルフィド捕捉剤として用いる新規Cysポリスルフィド高感度定量解析システムを構築することに成功した。さらに蛍光標識ヨードアセトアミド誘導体を用いることで、より簡便にCysポリスルフィドを定量的に解析するHPLC-蛍光検出法を構築した。LC-MS/MSによる解析系を用いて、活性Cysポリスルフィド生成酵素であるシスタチオニン γ-リアーゼ(CSE)による活性Cysポリスルフィド生成について、酵素速度論的解析を行った。その結果、CSEは高いCysポリスルフィド生成能を有することが示された。さらに、活性Cysポリスルフィド特異的蛍光プローブ(SSP4)を用いたイメージング解析を行い、活性Cysポリスルフィドの細胞内局在についてのイメージング解析に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初の研究計画通りに、従来の活性イオウ分子種定量的解析法と比較して、さらに特異性や定量性を改良した新たな解析系を構築し、in vitro, in vivoにおける活性Cysポリスルフィド生成レベルの定量的解析に成功した。 さらに、当初の計画では平成28年度に計画していたタンパク質システイン残基のポリサルファ化レベル解析を新規活性Cysポリスルフィド定量解析法を用いて、解析することに成功した。また活性Cysポリスルフィド生成機構をより詳細に解析する中で、これまでに報告のない新たな活性Cysポリスルフィド生成酵素を発見した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、生体内8-ニトロ-cGMPと8-SH-cGMPのレベルについて、LC-MS/MSを用いた定量的解析方法を用いて測定し、活性Cysポリスルフィドと8-ニトロ-cGMPの各細胞内レベルの相関を明らかにする。さらに、これらの細胞・組織中の8-ニトロ-cGMPシグナルの指標として、レドックス感受性転写調節因子Keap1のS-グアニル化をウエスタンブロットにより解析し、酸化ストレスによる生体内活性Cysポリスルフィドレベルの変動とタンパク質S-グアニル化によるシグナル伝達との関連を明らかにする。一方、タンパク質Cysポリスルフィド化レベルの定量的解析とポリサルファ化システイン残基の同定について解析を進め、タンパク質Cysポリスルフィド化とS-グアニル化、さらにポリS-グアニル化との相関関係を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、実験に使用する試薬、消耗品などの物品費が当初の予定よりも少ない額で目標を達成することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
生体内8-ニトロ-cGMPと8-SH-cGMPのレベルについて、LC-MS/MSを用いた定量的解析やタンパク質S-グアニル化によるシグナル伝達との関連を明らかにする為の実験に関する試薬や消耗品などの物品費に使用する。また、研究成果を論文にまとめ投稿する為の英文校正や論文投稿費として使用する。
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