本研究はブタ脳蘇生モデルを用いて、近赤外線分光法を用いたNIRO-Pulseによる脳血流変化と脳組織酸素飽和度の妥当性を検証し、臨床データと比較し心肺脳蘇生の新しい評価方法として確立することを目的とした。 <実験計画1:臨床におけるNIRO-Pulseでのデータ収集>計40症例の心肺停止患者のデータを収集した。脳組織酸素飽和度(TOI)や脈波酸素飽和度(SnO2)が良値であれば有意に心拍再開することができた(P<0.05)。また心肺停止後にTOIやSnO2が良値で維持でき、人工心肺まで行い社会復帰した症例も数例経験した。計40症例の内頸動脈ステント挿入術(CAS)/内頸動脈剥離術(CEA)施行患者のデータを収集した。TOIやSnO2は内頸動脈が約6割を占めており、外頸動脈領域の皮膚や皮下組織よりも、内頸動脈領域の脳内を観察していると考えられた。 <実験計画2:脳血流評価>ブタの脳血流が体重に対して小さく、NIRO-Pulseで測定したcHb波形の振幅も非常に小さく評価できないことが判明した。 <実験計画3:脳酸素化評価>心停止から4分後に心肺蘇生を開始するモデルを開発した。心原性心停止は心拍再開が80%、脳蘇生が40%に対して、低酸素性心停止は心拍再開が60%、脳蘇生が20%であった。心原性心停止が低酸素性心停止より心拍再開や脳蘇生が良好であった。TOIと脳組織酸素分圧はR=0.8-0.9と非常に相関しており、TOIは脳組織酸素の変化を捉えていると考えられた。
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