研究課題
正常細胞(正常組織)とがん細胞(がん組織)の比較から大腸癌や胃癌など様々なヒトがんにおいてDNAメチル化異常の存在が明らかとなっている。これらがんDNAメチル化異常はがん抑制遺伝子の発現抑制を介して発がんに寄与すると考えられているが個体レベルで検証した報告はない。本研究課題では個体レベルで標的配列のエピゲノム編集を可能にする技術の開発を目的の一つとし、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を基盤としたエピゲノム編集技術(ベクター)の開発を試みた。Cas9蛋白質はサイズが大きくベクター作製において制限が出てくるため、昨年度までに機能的な縮小化dCas9の同定を行った。本年度は(1)エピゲノム修飾酵素足場となる蛋白質をdCas9蛋白質及び縮小化dCas9蛋白質に融合、(2)ガイドRNAに既知長鎖非翻訳RNA(lncRNA)を付加し、その有用性を検討した。ルシフェラーゼアッセイを用いて短期的な発現抑制効果を検討した結果、これまで報告のなかったJARID2融合dCas9が機能的であることが明らかとなった。また、DNAメチル化酵素の足場となる約150塩基の既知lncRNAをガイドRNAに付加した場合でも、効果があることが明らかとなった。JARID2やlncRNAを用いたエピゲノム編集技術の報告はなく新規性が高いが、更なる改善の余地はあり、引き続き改良を検討している。本研究課題の二つ目の目的であるがんエピゲノム変異誘導マウスの作製は、これを可能にするベクターの開発まで至らず達成できなかった。今後は本研究で得られた融合dCas9蛋白質及びlncRNA-ガイドRNAベクターを発展させ、統合的エピゲノム制御システムの開発及びマウスモデルの作製を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件)
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