本研究計画は、非コードRNA(ncRNA)がどのように脱ユビキチン化酵素の機能を調節することで、標的タンパク質の脱ユビキチン化を制御しているのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、USP10によるHNRNPKの脱ユビキチン化とその機能的意義を明らかにすることにした。 まず、USP10がHNRNPKを脱ユビキチン化するのかを検討した。siRNAによりUSP10をノックダウンしたときの細胞内のユビキチン化HNRNPKの量を調査したところ、USP10のノックダウンにより細胞内のユビキチン化HNRNPKの量の増加が観察された。この結果から、USP10がHNRNPKを脱ユビキチン化していることが明らかになった。 次に、USP10によるHNRNPKの脱ユビキチン化の機能的意義を検討することにした。脱ユビキチン化酵素は標的タンパク質からユビキチン化修飾を取ることでその安定化に関与していることから、USP10によるHNRNPKの脱ユビキチン化が、HNRNPKの安定化に関与しているのではないかと考えた。そこで、USP10をノックダウンしたときの細胞内のHNRNPKの量をイムノブロットで検討したところ、特にHNRNPKの量に変化は見られなかった。ユビキチン修飾系は、タンパク質分解に限らず、広くタンパク質機能を制御することが知られる。そこで、次にUSP10によるHNRNPKの脱ユビキチン化が、HNRNPKの細胞内局在に関与しているのではないかと考えた。そこで、USP10をノックダウンしたHeLa細胞を抗HNRNPK抗体による免疫蛍光染色を行い、HNRNPKの局在の変化を観察したが、USP10の有無で顕著なHNRNPKの局在の変化は確認されなかった。また、USP10をノックダウンしたHeLa細胞を細胞分画法により核画分と細胞質画分とに分け、それぞれの画分におけるHNRNPKの変化を検討したが、USP10の有無で顕著な変化の差は見られなかった。これらの結果から、USP10によるHNRNPKの脱ユビキチン化が、HNRNPKの安定性や細胞内局在には関与していないことが示唆された。
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