研究課題
本研究の目的は、留学生が直面しやすい障壁やニーズを分析し、また、諸外国の予防的アプローチを使った留学生支援を参考にすることで、留学生を対象とした包括的な予防的心理援助モデルを構築することである。それにより、近年、日本の大学キャンパスにおいて増加を続ける留学生が、必要に応じて早期に相談資源や心理援助資源を利用し、精神的健康を保ちながら修学できる環境の整備促進に寄与することを目標としている。本年度の実績は以下の通りである。1. 過去3年間の留学生相談記録から、留学生相談を利用したことのある援助要請行動のあった学生たちの主訴を分析することで、留学生が留学先に置いて困難と感じる事象を特定し、どのようなルートを経て学生相談につながるかの分析を行った。また、留学生以外(教職員等)からの相談内容も併せて分析することで、キャンパス全体における支援体制構築の参考とした。2. 昨年度行った文献調査の結果と予防的支援の取組み過程について、国際学会において発表と行った。3. 当初研究計画にはなかったが、留学生を対象としたキャリアデ・ベロップメント・プログラムを試行し、キャリア発達についての心理教育を行い、自らのキャリアについて考える機会を提供することで、キャリア支援の側面からの二次予防(早期介入)を試みた。4. 日本人学生が留学生に支援や相談対応を提供する場所(ピアサポートデスク)を設置することで、支援資源へのアクセスに対する障壁を低くし、二次予防に繋げやすくする環境の整備を試みた。
3: やや遅れている
平成28年度には、留学生を対象とした面接調査と、諸外国における留学生支援プログラムの視察を開始する予定であったが、遅れている。その理由として、学内業務とのエフォートの調整が困難であったことが挙げられる。特に、面接調査に関しては、面接内容の詳細を決定するのに時間を要し、また研究代表者の異動が予定されていたので、倫理員会への書類提出を見送ったため、そして、海外における調査に関しては、学年暦や業務等の理由から、先方とこちらの予定の調整がつかなかったためである。
面接調査に関しては、異動先の倫理委員会における審査が終わり次第、留学生を受け入れている大学に依頼し、被験者の募集と面接調査を開始する。面接調査と並行しながら、文字起こしやデータの解析を行っていく予定である。また、学年歴の違いや業務等から調整が困難であった諸外国における留学生支援の視察は、今までの話合いに基づき、平成29年度は実施できる見込みである。さらに、当初の研究計画にはなかった予防支援の提供を実施できたことにより、これらを統合していくことで、より実効性のある予防的心理支援モデルの構築を進めていくことが期待される。
当初予定していた諸外国における調査が実施できなかったため、旅費において未使用額が生じた。
平成28年度の未使用額については、当初計画通り、諸外国における調査実施及び面接調査実施のための出張旅費として使用する予定である。
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