研究課題/領域番号 |
15K20899
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
篠田 一馬 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50639200)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 画像 / マルチスペクトル / ハイパースペクトル / カラーフィルタ / 色補間 / 圧縮 / センシング |
研究実績の概要 |
本研究では,デジタルカメラで広く用いられているカラーフィルタアレイをマルチスペクトル撮影に応用し,さらにモザイク画像に適した符号化法を設計することで,RGB画像システムと同等またはそれ以下のデータ量でマルチスペクトル画像を利用できるシステムを目指している. 本年度は,圧縮容易性を考慮したフィルタアレイの最適設計を行うために,フィルタアレイの分光感度制約を緩和した上で分光感度と復元関数の同時最適化を行った.本手法によって各フィルタの感度特性が広帯域な分布になるため,得られるモザイク画像の周波数特性が低周波に集中し,圧縮効率が高まることが期待される.実験の結果,同アルゴリズムにより生成されたフィルタは従来のフィルタと比較して大幅に画像復元誤差を低減することが確認された.また,フィルタアレイの感度設計時にトレーニングデータを使用できないケースも想定し,画素間の特性を利用した静的なフィルタアレイ設計手法も開発した. さらに,本年度は様々な利用アプリケーションにおける提案フィルタアレイの有効性を検証するため,デバイス開発,病理診断応用,農業応用における画像取得とその復元精度を検証した.その結果,フォトニック結晶を利用し安価にデバイス開発ができる可能性,病理診断において組織構造判別の精度を向上できる可能性,さらに,果物の非破壊糖度推定に応用できる可能性を示した.本年度はこれらの成果から,論文2編,特許出願1件,国際会議5件,国内会議5件の成果公表を行い,3件の受賞があった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた広帯域感度を持つフィルタアレイの最適設計手法の開発は既に終え,本成果について国際会議発表を行い,Best Paper Awardを受賞した.さらに,開発したフィルタを病理診断に応用した場合の有効性についても,埼玉医科大学および九州大学の病理医の協力の元で定量化を行い,当初3年目に予定していた研究内容の検証を既に終えている.スペクトルを利用した病理組織の分類手法に関する成果発表では,国際会議SPIE Medical ImagingにてRobert F. Wagner All-Conference Best Student Paper AwardのFinalistに選ばれている.さらに,当初計画していなかった実機開発の可能性についても検証し,特許出願およびコニカミノルタ画像科学奨励賞の受賞があった.以上,次年度の検証内容も含め予定していた研究項目について十分な成果が得られたため,当初の計画以上に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究項目については次年度分も含めほぼ完了している状態であるが,実機製造と農業・医療応用において,当初は想定していなかった優れた成果が得られたため,次年度ではこれらの追加検証,および未公表の結果について成果発表と論文投稿を予定している. 初年度に冷却CCD購入用の物品費の余剰が生じたが,予定通り2年目においてその大半を補正機材と成果発表費用に充当することで余剰額が大幅に削減され,現在はほぼ申請時の収支状況で推移している.よって,次年度の予算は当初の計画通り使用する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に冷却CCDのための物品購入費の余剰が生じ,これを2年度の機材購入費および2年度と3年度の成果発表費用に充当する計画であったため.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金は当初の予定通り使用する.併せて,上記余剰額については,2年目の成果が当初予定よりも多いため,その成果公表のための旅費および学会参加費に充当する予定である.
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