研究課題/領域番号 |
15K20900
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
海野 寿康 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50570412)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不飽和土 / 液状化 / 繰返しせん断試験 / 特殊土 |
研究実績の概要 |
2011 東日本大震災等の既往の地震地盤災害において緩勾配の盛土斜面が泥状になり大規模に崩壊・流下する流動性崩壊の被害例がある.これらの崩壊は,人的被害や二次災害の危険性が高いにもかかわらず,崩壊土砂が 不飽和状態であるため飽和地盤の液状化問題と比べ研究は進んでいない.本研究では,崩壊土中の空気・水分状態を模した不飽和土へせん断試験を実施し,未だ解明されていない地震中・後の土砂中の間隙空気・間隙水そのもの挙動やせん断変形挙動への影響を明らかにする.そして,その結果より流動性崩壊の発生~流動の一連のメカニズム解明し,危険度評価手法の構築を目指す.この目標に対して本年度は,以下の内容を実施した. 1.過去の地震で流動性崩壊が生じた崩壊地区からの試料採取:盛土斜面や自然斜面の流動性崩壊事例は,国内では第四紀火山灰分布地域を中心に数多く発生しており1984年長野県西部地震の御岳崩れに代表されるような大規模な崩壊事例が幾つか存在する.本研究では,栃木県県土整備部の協力のもと2011年東北太平洋沖地震において土砂崩壊が発生した栃木県那須烏山市川西地区,高根沢町上柏崎地区の崩壊現場について現場調査を行うとともに実験用試料として土砂を採取した. 2.不飽和土の動力学挙動に対する間隙空気の状態や水分状態の影響の解明:採取した崩壊土砂に対して飽和繰返しせん断実験,および不飽和繰返しせん断実験を実施し,液状化強度やせん断変形挙動に対する間隙空気と水分状態の影響について調べた.その結果,両崩壊土砂の持つ液状化強度は中密な"きれいな砂"と同じ程度であり液状化抵抗が極端に小さいことが判明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特殊土および不飽和土の繰返しせん断実験が実施可能なように装置を改良し,繰返しせん断実験を行っている.改良箇所は,せん断中における間隙空気の微小な体積変化を高精度で計測するためにせん断応力を制御するためのサーボ式空圧バルブとその制御機器,および計測精度の高い体積変化計と動ひずみアンプおよび計測センサー,制御用PCの導入である.本研究で改良した実験装置は,間隙空気圧と間隙水圧を個別計測可能であり,また任意の周波数で繰返しせん断が与えられる高精度のものであるが,実験は問題なくできている.この際に用いる土については2011年東日本大震災で崩壊した栃木県内の斜面より火山灰質土や火力発電所から排出される石炭灰など特殊土を現地から採取して実施している. 得られた成果については,地盤工学会や土木学会の年次大会で発表を予定している.次年度については次のステップとして,さらに実験を追加するとともに,数値解析等にも着手する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
繰返し載荷実験については,今年度同様の飽和・不飽和試料を用いて実験を行う.この際には,粒度分布や粒径を変化させた実験を行い,本年度得られた結果と比較する予定である.また,得られた実験結果について土骨格・間隙水・間隙空気を扱った三相系多孔質体理論と簡易な弾塑性構成式による液状化解析法を用いて不飽和繰返し三軸試験のシミュレーションを実施し,不飽和土を対象とした動的解析上における間隙空気や水分状態の影響の程度について検討を行う予定である.なお,本年度に得られた成果については,地盤工学会や土木学会の年次大会で発表を予定している.次年度については次のステップとして,さらに実験を追加するとともに,数値解析等にも着手する予定である.
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