既往の地震地盤災害において自然斜面や盛土斜面が泥状になり流下する流動性崩壊が多大な被害をもたらしている.本研究では,崩壊・流動中の土砂内間隙空気,間隙水そのものの挙動やせん断変形挙動への影響を明らかにし,その結果より流動性崩壊の発生~流動の一連のメカニズムを解明し,危険度評価手法の構築を試みた.研究より得られた知見は以下の通りである. 1.繰返しせん断変形挙動に基づく流動性崩壊危険土砂の判別: 複数の火山灰起源土や工業用硅砂を用いて繰返しせん断試験を実施し次の知見を得た.①非排気・非排水条件下で動的載荷された場合,負のダイレイタンシーによる体積収縮が起きることから,火山灰起源に関係なく通常液状化判定が必要になる土であれば,初期飽和度によっては十分に液状化に至り,崩壊する危険性を有する.②火山灰起源の有無による変形挙動の差は,特に低い含水状態時において顕著化する.他方,同一火山灰質土では,細粒分含有率が高いほうが有効応力はゼロに至り易い. 2.流動崩壊中の土中間隙空気・間隙水の変形挙動への影響: 流動中における土砂中の間隙空気・間隙水の挙動を明らかにするため工業用硅砂に対してコンクリート工学分野で使用される高流動補助剤である空気連行剤(AE剤)を添加させ,非排気・非排水条件下で繰返しせん断試験を実施した.得られた知見は次の通りである.①AE剤を添加し強制的に高流動化すると無添加では液状化に至らなかった外力条件でも有効応力がゼロに至り液状化する結果となった.この結果によれば,従来想定されていなかったようなかなり低い飽和度であっても,水分状態がAE剤添加時と同じ状況であれば,土は容易に液状化し流動化する.②高流動化した状態では,液状化強度のみ変化するだけでなく繰返しせん断変形挙動そのものが変化する.流動化試料の場合,繰返しせん断時の応力履歴や有効応力の挙動そのものが大きく変化する.
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