研究課題/領域番号 |
15K20904
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
羽賀 望 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50638476)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 人体通信 / ノイズ |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究計画として,「マクスウェル方程式の準定常近似による商用電源・接地系統のモデル化」を挙げていた.ここで,はじめから人体通信システムを想定して検討を行うのは複雑過ぎるため,まずはノイズ源となりうる電源回路(AC-DCコンバータ)と,ノイズの伝達経路となりうるACケーブルのみを取り扱った.電源回路としては,標準的なフライバック・コンバータを用いた.一方,ACケーブルとしては,2本の電力線と1本の接地線からなる3線ACケーブルを用いた.一般的なEMC試験では,接地線の電位をゼロと仮定して,2本の電力線のコモンモード電流とディファレンシャルモード電流を評価することが行われるが,実際には接地線のインピーダンスはゼロではないため,電力線と接地線の3線を同じ向きに流れる電流(3線コモンモード電流)が発生しうると予想した.本研究では,簡単のため3線ACケーブルは純粋なインダクタンスのみ有する3線の相互誘導回路としてモデル化を行った.上記の内容で回路シミュレーションを行った結果,予想通りに3線コモンモード電流が発生することを確認した.また,この3線コモンモード電流に対して,一般的なノイズフィルタが効果を発揮するかどうかについても検証を行った結果,DC側回路のグラウンドとノイズフィルタのグラウンド端子間のインピーダンスが十分小さければ3線コモンモード電流は抑制されるが,インピーダンスが大きい場合,ノイズフィルタは効力を失うことを明らかにした.本成果は電子情報通信学会の環境電磁工学研究会で発表を行った. 一方で,以前より検討を進めていた人体通信チャネルにおける放射ノイズのモデル化に関しても併せて実施した.放射ノイズの寄与を含んだ通信チャネルの等価回路の妥当性を実測によっても確認し,その成果の内容は学術論文誌に掲載された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の検討予定課題としては,「マクスウェル方程式の準定常近似による商用電源・接地系統のモデル化」の他に,「樹脂カバー等の絶縁体がアンテナ特性に及ぼす影響の評価」も挙げていた.しかし,研究遂行の都合上,これは先送りし,代わりに,平成28年度の検討予定課題のひとつである,「マクスウェル方程式の低周波近似による商用電源・接地系統のモデル化」を,やや前倒しで検討を開始している.したがって,全体的に見れば研究の進捗は順調なものと考えている.
|
今後の研究の推進方策 |
研究内容に関して,多少の先送り,前倒しはあったが,最終年度までに行う検討内容としては,当初の計画通りとする予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーションによる検討を進めた結果,測定器に要求されるダイナミックレンジが広いことが判明した.そのため,平成27年度に導入したオシロスコープだけではなく,新たにスペクトラムアナライザが必要と判断した.しかしながら,平成28年度の交付予定額ではその費用を賄いきれないため,平成27年度の予算を繰り越すことにした.
|
次年度使用額の使用計画 |
上記の通り,平成27年度からの繰り越し額と平成28年度の交付額を合わせて,まずスペクトラムアナライザを購入予定である.
|