研究実績の概要 |
小脳の神経ネットワークの形成メカニズムを明らかにすることを目的とし、小脳に知られる区画構造の神経基盤とその形成過程について研究を行った。まず、小型魚類ゼブラフィッシュに、複数の光技術(神経活動イメージング、光遺伝学)と行動実験を組み合わせた解析システムを作成した。小脳へ入力する知覚情報として視覚刺激(Optokinetic Response)、触刺激を用い、これらに伴い活動上昇を示す小脳領域を同定した。小脳プルキンエ細胞特異的にカルシウムセンサー(GCaMP6s)を発現するゼブラフィッシュ系統を用いた高速イメージングにより、視覚・触刺激により異なるプルキンエ細胞集団が異なる活動応答パターンを示すこと、またこれらの細胞集団の空間分布の3次元的な解析を行った。さらに、発生段階を追った観察により、これらの応答するプルキンエ細胞集団の形成過程の一端を明らかにした。 さらに、膜電位変化の検出を光学的に行うことにより神経活動の高速かつ直接的な観察が可能な膜電位イメージングを、ゼブラフィッシュ小脳に用いることを目指し、新規の膜電位センサー2種(ASAP1, QuasAr2)について、遺伝子組換えゼブラフィッシュ系統を作成した。Gal4-UAS遺伝子発現系を用い、全ニューロンや小脳の特定ニューロンにASAP1を発現させた結果、ニューロンの細胞膜への局在を確認し、さらに電気刺激に伴う小脳での神経活動上昇の観察に成功した。一方、QuasAr2については、細胞膜への局在が観察されなかった。現在論文を投稿中である。
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