本研究は,液体窒素温度付近(-196℃)において駆動を実現するソフトフィルムアクチュエータの確立を目標としている.昨年度,発展課題として液体窒素温度環境において駆動可能な湾曲型アクチュエータを実現した.一方でアクチュエータの製作方法に起因した耐久性の低下が生じたことから,莢状構造を成型可能なフィルム型取り装置の開発を進めた.本年度は,①フィルム型取り装置を用いて湾曲型アクチュエータを試作・評価した.加えて,②成型の自由度,生産性を向上させた熱間圧空成型法を確立し,③同成型法を利用した湾曲型アクチュエータの試作・評価を行った. ①昨年度開発したフィルム型取り装置を用いて,これまで開発してきた蛇腹構造を持つアクチュエータと同出力を目指した莢状湾曲型アクチュエータの製作を行った.室温および-136℃において駆動実験を行い,いずれの温度環境においても発生トルクは同程度の性能を有することを確認した.また,繰り返し駆動試験を行い,約4倍の繰返し回数まで耐えられる事を確かめた. ②フィルム型取り装置では,一度に1つの構造しか成型できず,また非対称性を持つ構造等の成型が不可能であった.そこで,本年度はポリイミドフィルムの熱間圧空成型法を確立した.本成型法により,金型に複数の形状を配置することで,自由な構造を一度に大量に成型可能となった. ③本年度開発した熱間圧空成型法を利用し,湾曲型アクチュエータの製作を行った.試作したアクチュエータは,従来と同程度の性能を有しており,一度の成型で製作可能である. 以上の成果より,複雑な動きを実現するアクチュエータを一度の成型で製作可能となった.開発した成型技術・アクチュエータを用いることで,今後,液体窒素温度に限らず,災害発生時の初動動作や宇宙環境等で利用可能な極限環境用極軽量フィルムロボット(Filmotics)の実現が期待される.
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