研究課題
1. これまでに研究実績のあるシロイヌナズナやタバコ等の双子葉植物に加え、本研究ではスフィンゴ脂質構造が不明であったイネやコムギ等の単子葉植物において、スフィンゴ脂質分子構造を迅速に同定しLC-MS/MSにより一斉定量するスフィンゴリピドミクスの解析手法を確立した。これにより、イネ組織間のスフィンゴ脂質分子組成の多様性や、極長鎖脂肪酸合成異常によりシュート形成不全を示すonion変異体における脂質代謝変動を網羅的に捉えることに成功し、本手法の実用性を実証した。本成果はPlant J.誌に発表した (88, 681-693, 2016)。さらに脂質サンプル調製法や分析システムの改善をすすめ、従来の手法に比べ迅速・簡易かつ低コストな一連の実験手法を整備した。本手法の活用により、植物スフィンゴ脂質の多様性とその生物学的意義の解明が今後さらに加速することが期待できる。2. スフィンゴリピドミクスの活用により、これまで不明であった植物固有のスフィンゴ脂質特異的糖鎖構造を形成する一連の糖転移酵素ファミリーを初めて同定することに成功した。特にシロイヌナズナで主要なヘキソース特異的タイプと、イネで主要なN-アセチルヘキソサミン特異的タイプの2種の酵素機能の違いを発見し、これらの酵素遺伝子を利用することによりそれぞれの植物が有する特徴的なスフィンゴ脂質糖鎖構造を人為的に改変することに成功した。これまでにこれらの糖鎖構造が細胞壁との相互作用とその構造形成への寄与、さらに細胞膜機能として病原応答やストレス馴化に関与することを見出した。この成果は学術誌として一報を発表し、さらに続報を現在投稿準備中である (Fang et al. Plant Cell, in press)。今後の遺伝学的解析により植物スフィンゴ脂質糖鎖構造の生物学的機能の解明とその育種利用への展開がひらけることが期待される。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Plant Cell
巻: in press ページ: -
http://dx.doi.org/10.1105/tpc.16.00186
J Plant Res
巻: 130 ページ: 571-585
10.1007/s10265-017-0923-7
Plant J
巻: 88 ページ: 681-693
10.1111/tpj.13281
巻: 28 ページ: 1966-1983
http://dx.doi.org/10.1105/tpc.16.00201