本研究は、アメリカとカナダを比較研究しながら、孤独な表現に対する所持規制の問題を中心に、表現の自由の保障範囲について検討を行うものである。昨年度は渡米して資料収集を行い、アメリカの関連判例の分析を行った。 今年度は、引き続きアメリカの研究を進めるとともに、カナダの研究にも取り掛かった。アメリカの研究については、判例分析を進めつつ、足りない資料を渡米して入手した。ロバーツコートの表現の自由に関する部分はなお動きがあり、最新の判例動向についても分析を行った。カナダの研究については、カナダの判例の基本的スタンスを理解するために、マギル大学を訪問し、アンタキ教授にアドバイスをもらった。また、現地で判例の資料収集を行った。 アメリカとカナダの分析を行うことにより、孤独な表現は表現の自由のみならず、自宅というプライベートエリアにおける活動であることも重要な要素になっていることが判明した。このような側面は、プライバシーの権利、ひいては個人の尊厳にも関わる点であり、日本で分析を進める際には憲法21条に加え13条も対象になる可能性がある。そのため、憲法13条が孤独な表現の保障にどのように関わるのかを考えるため、個人の尊厳が新たな検討課題として浮上した。 以上のように、平成28年度は、引き続きアメリカの資料収集および資料読解を行うとともに、カナダの判例分析にも取り掛かった。こうした作業により、平成27年度の研究を継続・発展させ、3年目に検討を深めるべき論点を浮かび上がらせた。
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