研究課題/領域番号 |
15K20915
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永岡 紗和子 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任研究員 (10633315)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 強迫性障害 / 心理教育 / 発達障害 |
研究実績の概要 |
強迫性障害 (Obsessive-compulsive disorder; OCD) とは、意志とは無関係に繰り返し頭に浮か、不快感を生じさせる強迫観念と、強迫観念を振り払うために繰り返し行われる強迫行為からなる (APA, 1994)。発症には成人期と児童青年期の2つのピークがあり、30%前後が10歳から15歳に集中するといわれている。子どもの強迫性障害は、大人と比較すると発達障害を併存する症例が多く、不合理感の低さや儀式化したこだわりが多いことから、一般に治療が困難と考えられている。また、その治療の中核は認知行動療法の心理教育にあるが、本邦では、有用性が確認され広く一般に使用される、子ども向けの強迫性障害の心理教育資料が存在しない。そこで本研究は、臨床現場のインタビューをもとに心理教育のポイントをまとめ、特に発達障害を併存する症例の特徴を考慮し、子どもの強迫性障害の心理教育の教材を開発する。 本年度は、本研究と並行して実施している子どもの強迫性障害に対する認知行動療法の臨床研究の中で、現行の心理教育資料(原案)について治療者と研究参加者の意見を収集しながら改訂を重ねている。平成27年度は、児童OCD患者14名に対して研究参加のアセスメント面接が実施され。そのうち5名が臨床研究の除外基準に該当し、9名がエントリーされた。9名のうち2名が、DSMにより自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder)と診断された。2名が治療から脱落し、平成27年度末時点で7名が治療継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
子どもの強迫性障害の臨床研究にエントリー後、併存疾患等の問題で治療に参加できない被験者も多く、インタビュー可能な症例数はやや不足している。治療に参加した被験者はCYBOCS(Child Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale)の得点が治療前後で平均37%改善しており、症状改善後に治療を振り返ることで、心理教育の効果や分かりやすさのポイントをおおむね順調に収集できてはいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 子どもの強迫性障害の治療者および研究参加者から収集したインタビューをもとに治療のポイントと難点をまとめ、発達の偏りをもつ児童にも理解しやすい心理教育を資料としてまとめる。 2. 作成した心理教育資料の、分かりやすさや覚えやすさ、治療へのモチベーションの変化等ついて量的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 平成28年度以降に使用予定の予算が発生したことによる節約。 2. 平成27年度メンタルヘルス岡本記念財団からの助成を受けたため。
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次年度使用額の使用計画 |
心理教育資料の出版社への編集依頼、国際学会への渡航費等。
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