研究実績の概要 |
RNA編集とは転写されたRNAの塩基配列が変化することであり、アデノシンのイノシンへの変換(A to I editing)が最も知れらている。本研究ではA to I editingを生じるmiRNAに着目することとした。 公開されている肺腺がんのsmall RNA sequenceのデータベースを再解析し、肺がんにおいてRNA編集の割合が変化しているmiRNAを同定した。例えばmiR-200b, miR-381においてはA to I editingの増加が認められ、一方でmiR-379, miR-99a, miR-411, miR-497においてA to I editingの減少が認められることを明らかにした。 この中でRNA編集の比率が高いmiR-99aに着目し、肺腺がんの手術検体50例の腫瘍部位と各々の対応する正常肺組織部位とのRNA編集を定量した。50例中19例において正常肺組織部位と比較してRNA編集の低下が、1例において上昇が認められ、残り30例では変化が認められなかった。またA to I editingをもたらすRNA編集酵素(ADAR1, ADAR2)発現を定量PCRを用いて解析し、miR-99aのRNA編集に働いていることが報告されているADAR2の発現が肺がんにおいて低下していることが確認された。さらに、miR-99aのRNA編集が低下している症例では術後再発の割合が高い傾向が見いだされた。 以上の結果から肺がんにおけるmiRNAのRNA編集の変化が明らかとなり、今後はRNA編集に伴うmiRNAの機能の変化やがんの形質との関連について解析を進める予定である。
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