研究課題
長期のエネルギー政策や地球温暖化対策の立案にはエネルギー・シナリオが基礎的な役割を果たす。しかし、エネルギー・シナリオは不確実性の扱いで問題があることが知られており、特に新技術の台頭など、想定外またはサプライズのような事象の扱いに問題が残る。本研究ではエネルギー・シナリオにおけるサプライズの扱いについて調査し、既存のシナリオのバイアスとそれへの対処法を検討した。サプライズとして過去に大幅な価格低下をなしとげ急激に導入量が伸びている太陽光発電や風力発電を扱った。既存のエネルギー・シナリオでは太陽光・風力の大幅導入の再現が不十分である。原因としてはエネルギー・モデルのコスト設定が過大であり、コストと導入量の関係が学習曲線からずれていることが挙げられる。再生可能エネルギーは再生可能エネルギー割当基準(RPS)や固定価格買取制度(FIT)などで導入が進んだことを踏まえると、均一な炭素価格を仮定することが多いエネルギー・シナリオでは導入が過小評価されることは想像に難くない。エネルギー技術の変化は本質的に不確実であるため、エネルギー・シナリオがここ数年のトレンドを捉えられないこと自体は問題とはいえない。しかし、コストが急速に低下する技術については、エネルギー・モデルのパラメーターの更新を毎年行うこと、また学習曲線の効果を積極的に考慮することなどの対応は可能である。政策プロセスへの応用については、日本におけるエネルギー・シナリオと政策プロセスの関連をレビューした。レビューの結果、サプライズの扱いに限定せず一般的なエネルギー・シナリオの政策過程での扱いが重要課題であることが明らかになった。日本ではモデル間の違いによる不確実性の分析が不十分であり、モデル相互比較プロジェクトなどより明示的に不確実性を分析する研究手法の導入、またその結果の政策過程での反映が望ましいことが明らかになった。
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Climate Policy
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10.1080/14693062.2017.1323721