研究課題/領域番号 |
15K20925
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
布浦 鉄兵 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (40444070)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | オスミウム / 超臨界水酸化 / 超臨界二酸化炭素抽出 / 廃液処理 / 四酸化オスミウム |
研究実績の概要 |
本研究は、極めて高い毒性を持つにもかかわらず世界的に無害化処理技術の確立されていないオスミウム含有廃液について、超臨界水及び超臨界二酸化炭素を複合利用した新規オスミウム除去・回収プロセスを開発することが目的である。 (1)オスミウムの超臨界水酸化挙動の解明:回分式実験装置と流通式連続実験装置を、耐腐食性の強いステンレスSUS316製配管と熱電対及び圧力計を用いて作製した。装置内にオスミウム化合物水溶液と過酸化水素水を導入し、反応温度まで昇温し、所定時間反応させたのち急冷して反応を停止し、残留液や気相生成物等を分析した。各種反応条件を変化させ、超臨界水中におけるオスミウム化合物の酸化反応特性について測定した。このような検討例はこれまでに存在せず、学術的に極めて重要な新しい知見が得られた。 (2)酸化オスミウムの超臨界二酸化炭素抽出挙動の検討:連続式抽出実験装置を設計し、千葉県庁に高圧ガス製造装置として申請し、製造許可を得たうえで実験装置の作製を行った。実験においては、SUS316製配管で作成した抽出器内に所定濃度の四酸化オスミウム水溶液を封入し、管状炉及び背圧弁にて内部の温度及び圧力を調整したうえで、送液ポンプにて超臨界二酸化炭素を所定流量で流通させ抽出工程を実施する。抽出器から流出する超臨界二酸化炭素を減圧しながらスクラバーを通過させ、抽出されたオスミウムを捕捉して分析する。平成27年度は、抽出工程を安定して実施できる基本的操作条件の確立を行った。 (3)四酸化オスミウムの還元除去に関する基礎的検討:四酸化オスミウムをエタノールやアセトアルデヒドで還元して沈殿除去する処理方法について検討を行い、廃液のpHや共存物質濃度がオスミウムの挙動に及ぼす影響を詳細に検討した。本法によりオスミウムの除去が可能な条件を明らかにしたが、これは学術的にも廃液処理の実用上も極めて重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超臨界二酸化炭素抽出実験装置の製造に時間を要したため、超臨界二酸化炭素抽出に関する検討には若干の遅れが生じたものの、結果的には当初の想定通りの実験装置を製造することができ軌道に乗っている。一方で、超臨界二酸化炭素抽出実験装置の製造作業の待機中に、上記「研究実績の概要」(3)に示した四酸化オスミウムの還元除去に関する基礎的検討を実施し、本研究の目的を達成するに資する重要な知見を多く得られたため、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は以下の計画に沿って研究を推進する。 (1)オスミウム模擬廃液の超臨界水酸化挙動の検討:前年度と同様の実験装置を用いて検討を行う。実験試料としては、実際のオスミウム廃液の組成を参考に、オスミウム化合物に加えて代表的な共存物質を添加した模擬廃液を複数種作成して実験検討を行い、各種共存物質がオスミウムの反応挙動に与える影響を定量的に明らかにする。 (2)四酸化オスミウム廃液及び超臨界水酸化処理した模擬廃液からのオスミウム抽出挙動の解明:前年度と同様の実験装置を用いて検討を行う。まず、四酸化オスミウム水溶液からの超臨界二酸化炭素抽出挙動を、抽出工程後の残存オスミウム濃度の分析及び捕捉されたオスミウム量の分析から抽出率・回収率等を求めることにより、定量的に明らかにする。しかる後に、上記(1)の検討で超臨界水酸化処理した後の模擬廃液を用いて、四酸化オスミウムの抽出特性に関する検討を行い、各種共存物質や超臨界水酸化による影響を定量的に明らかにする。 以上(1)及び(2)の検討を9ヶ月間で行い、酸化処理・抽出処理双方における操作パラメータの影響を明らかにする。これまでの検討からオスミウムの総括反応速度式を求め、廃液中のオスミウム濃度を所定の濃度まで低減するために必要な反応条件や装置設計を決定することが可能となるので、最後の3ヶ月において超臨界水酸化と超臨界二酸化炭素抽出の双方を組み合わせた実証試験を行う。必要に応じて追加実験を行ったうえで、本プロセスの適用可能性について総括を行う。
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