本研究は、極めて高い毒性を持つにもかかわらず世界的に無害化処理技術の確立されていないオスミウム含有廃液について、超臨界水及び超臨界二酸化炭素を複合利用した新規オスミウム除去・回収プロセスを開発することが目的である。 (1)オスミウムの超臨界水酸化挙動の解明:回分式実験装置と流通式連続実験装置を作製し、検討を行った。本年度は、装置内にオスミウム含有模擬廃液と過酸化水素水を導入し、反応温度まで昇温し、所定時間反応させたのち急冷して反応を停止し、残留液や気相生成物等を分析した。各種反応条件及び共存物質濃度等を変化させ、オスミウム化合物の酸化反応特性及び共存物質の酸化挙動について測定した。オスミウム及び共存物質の相互作用に立ち入った検討例はこれまでに存在せず、学術的に極めて重要な新しい知見が得られた。 (2)酸化オスミウムの超臨界二酸化炭素抽出挙動の検討:前年度に作製した実験装置及び確立した実験操作条件を基に、超臨界二酸化炭素抽出実験を行った。抽出器内に所定濃度の四酸化オスミウム水溶液を封入し、管状炉及び背圧弁にて内部の温度及び圧力を調整したうえで、送液ポンプにて超臨界二酸化炭素を所定流量で流通させ抽出工程を実施した。抽出器から流出する超臨界二酸化炭素を背圧弁で減圧したのちにスクラバー回収器を通過させ、抽出されたオスミウムを捕捉して分析した。抽出器内及び回収器内のオスミウム物質バランスから、各反応条件が抽出率・回収率に及ぼす影響について検討した。 全研究期間を通じ、本研究により、オスミウム含有廃液の超臨界水酸化挙動、四酸化オスミウムの超臨界二酸化炭素抽出挙動、及び四酸化オスミウムの還元除去に関する基礎的な挙動を整理した。これらは学術的にも廃液処理の実用上も極めて重要な知見である。
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