タンパク質電子状態計算において、計算構造モデリングの自動化とQCLO法に基づく電子状態計算の自動化に関する研究開発を行った。QCLO法に基づく自動計算シナリオとして、YAML形式の入力ファイルを採用することにより、プログラミングの知識なしにQCLO計算におけるフラグメント分割・フレーム分子作成手順を記録し、シミュレーションの再現性を保持することに成功した。同時にYAML形式ファイルが持つ構造化データを利用することで、QCLO法のフレーム分子・フラグメントを表現し、様々なヘテロ分子における電子状態計算に必要な自由なフラグメント分割を実現した。ペプチド鎖において、各残基の末端処理にアセチル基・N-メチル基を利用することで、計算ステップの大幅な削減を可能にした。また、ヘテロ分子において、任意のフラグメント分割を行うことで発生するダングリングボンドに対し、必要なモデリング・末端処理を実装したことで、安全かつ簡便にQCLO計算を達成することが可能となった。 開発したQCLO計算プログラムの実証計算として、ヘテロ分子を含むタンパク質数種に対して計算構造モデリングと電子状態計算を行った。本プログラムで作成された計算構造ならびに電子状態シミュレーション結果は、良好な結果を示した。本研究により、タンパク質電子状態データベースへの計算事例追加をより加速させるための基盤技術を確立した。開発したソースコードはインターネット上に公開済みである。
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