研究課題/領域番号 |
15K20936
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水本 憲治 北海道大学, 医学研究科, 客員研究員 (90730218)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 感染症疫学 / 数理モデル / 蚊媒介疾患 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、デング熱流行に対する東京等の都市部における住民の蚊媒介疾患に対する感染リスク回避行動の提示、2014年夏のデング熱患者数の推定及び、公衆衛生的対策・個人の感染リスク回避行動が感染伝播に与える影響を推定し、さらに、特定数のデング熱等の蚊媒介疾患の輸入感染症例が渡来したときの大規模流行発生のリスクを明確に示し、一連の過程を通して感染予防対策に関する政策意思決定に資する根拠を数値として提供することである。 2015年度に世界的な課題となった、蚊媒介疾患であるジカ熱の大規模流入発生等のリスクが高まったことから、ジカ熱に焦点を当て2015年度以降研究に取り組んでいる。感染伝播力(Transmission potential)のほか、感染した妊婦における小頭症乳児の発生リスクの定量的評価、及び輸入リスク・国内での流行リスクの定量的評価を実施した他、米国フロリダ州において発生しているジカ熱の輸入症例・国内症例(2次感染)の流行に対して、国際共同研究を実施し、流行予測を実施した。 その他、2016年度に実施した研究成果としては、季節性インフルエンザの超過死亡数の推定であり、これは感染症サーベイランスデータに対する時系列分析を、複数の頑健な統計・数理モデルを組み合わせて実施するものであり、例えば日本で蚊媒介疾患の伝播が生じた場合、同手法を適用することで、その流行を捕捉・予測することが可能になることが見込める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年末から、南米を中心に蚊媒介疾患であるジカ熱の大規模流行が発生したことから、蚊媒介疾患については、現在までジカ熱を対象にした研究を実施してきており、米国フロリダ州において発生しているジカ熱の輸入症例・国内症例(2次感染)の流行に対して、国際共同研究を実施し、流行予測を実施している。研究実施計画における4)他の蚊媒介疾患の流行発生リスクの計画について、蚊媒介疾患であるジカ熱に関しての発生リスクを分析し、国際学術誌に複数報告してきていることから、計画通りに実行できている。また、現在、季節性インフルエンザの時系列分析で取り組んでいる統計・数理モデル等の分析・手法は、今後日本において蚊媒介疾患が流行した場合に適用可能である。 以上の状況を総合的に判断すると、現在までの進捗状況としては概ね良好と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、2014年のデング熱流行の発生を受けて、今後デング熱をはじめとする蚊媒介疾患の流行の発生が危惧されることから、1) デング熱流行に対する東京等の都市部における住民の蚊媒介疾患に対する感染リスク回避行動の、質問紙票調査等を通じた提示及び公衆衛生的対策・個人の感染リスク回避行動が感染伝播に与える影響の推定、2) 特定数のデング熱等の蚊媒介疾患の輸入感染症例が渡来したときの大規模流行発生のリスクの明確化を通じて、感染予防対策に関する政策意思決定に資する根拠を数値として提供することである。 実施計画としては、(1)インターネットを用いた個人レベルでの感染リスク回避行動についての質問紙票調査、(2) 数理モデルを利用した流行発生リスクの記述、(3)質問紙票調査から得られたデータ、メタデータおよびサーベイランスデータの定量的分析とモデル適合、(4)他の蚊媒介疾患の流行発生リスクの記述及びメタデータの定量的分析とモデル適合、を予定していた。 今後の推進方策としては、質問紙票調査について、デング熱流行が次回起こった際に実施可能なように準備を進める。媒介疾患の流行発生リスクについては、ジカ熱を対象に、他の流行地域(米国フロリダ州)におけるデータを活用して分析を実施し国際学術雑誌に報告してきていることから、対象拡大のほか、流行発生リスクについて改良検討予定である。
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