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2018 年度 実績報告書

スピン鎖が持つ自由度とその有効場理論に現れる超対称性との関係の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K20939
研究機関東京大学

研究代表者

松井 千尋  東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (60732451)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2019-03-31
キーワード非平衡ダイナミクス / XXZスピン鎖 / スピン反転非対称な保存量
研究実績の概要

非平衡ダイナミクスにおいて可積分系に特徴的な振る舞いを明らかにするため、可積分系の保存量がもつ物理的性質について調べた。特に、近年導入されたXXZスピン鎖におけるスピン反転非対称な保存量に焦点を当てて研究を行なった。
可積分系は、その緩和状態が初期状態に対する保存量の期待値で指定されることが知られている。この関係は、特にXXZスピン鎖においてその理論背景がよく理解されており、緩和状態を特徴付けるベーテ根密度をスピン反転対称な保存量の期待値で記述する関係式として知られている。この事実から、一見、スピン反転非対称な保存量はXXZスピン鎖の非平衡ダイナミクスに寄与しないように思える。しかしながら、ベーテ仮設法はXXZスピン鎖がもつZ2対称性により等価な二つのセクターのうち片方のみ記述するものであり、それがどちらであるかは系全体の磁化で決定される。実際に、全磁化を表す演算子がスピン反転非対称な保存量の特別な極限から得られることを示した。
また、可積分系において特徴的な非平衡ダイナミクスに、弾道カレントが挙げられる。これは、初期状態にカレントが存在すれば、長時間経過後もカレントが存在し続けるというものである。この弾道カレントは、可積分系がもつ保存量への射影部分で与えられる。従って、カレントがスピン流のようにスピン反転対称性をもたない場合、スピン反転非対称な保存量の存在が重要になる。先行研究では、示量性をもつスピン反転非対称な保存量への射影部分が弾道的スピン流として存在することが指摘されていたが、必ずしも示量性をもたない保存量であっても、スピン反転非対称であれば弾道的スピン流に寄与する場合があることがわかった。この、熱力学的に不可解な保存量は、実はその線形結合を取ることで示量性保存量となることを示した。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Bologna(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Bologna
  • [学会発表] Quasilocal charges and non-equilibrium behavior in integrable systems2018

    • 著者名/発表者名
      Chihiro Matsui
    • 学会等名
      Correlations in Integrable Quantum Many-Body Systems
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 可積分系における保存量の準局所性と非平衡現象2018

    • 著者名/発表者名
      松井 千尋
    • 学会等名
      日本物理学会2018年秋季大会
  • [備考] Francesco Ravanini

    • URL

      https://www.unibo.it/sitoweb/francesco.ravanini/en

URL: 

公開日: 2019-12-27  

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