研究課題/領域番号 |
15K20942
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新谷 裕加子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30596961)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 質量解析 / 左室補助人工心臓 |
研究実績の概要 |
心筋生検は心筋炎や心筋症の診断に必要な侵襲的検査であり,組織学的に炎症細胞浸潤の有無や線維化の程度,心筋細胞肥大や粗鬆化,沈着物の有無などを観察することができる.しかし,心筋生検は心内膜側の極小さな検体に過ぎず,心機能や心予後を予測することは現状困難である. 我々は,液体クロマトグラフィー質量分析法を用いたこれまでの研究で,中間径フィラメントなどの心筋由来蛋白の定量解析や翻訳後修飾などについて興味深い結果を得ている.これらの経験を踏まえ,左室補助人工心臓装着前後の心筋組織に対し,液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて解析し,心不全の新規診断マーカーを同定し,臨床診断に応用できるシステム作りを目指すものである. 【本研究の具体的な目的】1.心筋組織の蛋白質を液体クロマトグラフィー質量分析法を用いて,経時的に解析し,心負荷の予後予測因子となりうる蛋白質を同定する.2.蛋白質の同定のみならず,その翻訳後修飾についても検討し,実際の臨床診断に応用できる病理診断システムを確立する. 【本研究の流れ】1.移植時心摘出時と補助人工装着時の臨床データの構築,病理組織学的検討2.液体クロマトグラフィー法を用いた蛋白質の網羅的かつ定量的な質量解析3.免疫組織学的検討と質量分析法との比較検討4.日常の病理診断へ応用するためのシステム作り 【本研究の実績】上記【本研究の流れ】の1,2.を終え,現在はデータ解析を行っている.既に興味深い蛋白質を多数見出しており,本年は学会発表や論文作製にとりかかっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心筋組織の蛋白質を経時的に解析し,心負荷の予後予測因子となりうる蛋白質を同定するために,当院で左室補助人工心臓を挿入され,心臓移植を行った症例を28例抽出した.左室補助人工心臓の脱血管挿入部切除の心筋組織(A)と移植摘出心の左室自由壁の心筋組織(B)を回収,質量解析を行い,1000種類以上の蛋白質のB/A比データを入手した.左室補助人工心臓による蛋白質の変化をみるために,臨床データや画像解析を用いた心筋の線維化率との相関を統計鰐的に解析し,細胞外マトリックスに関する蛋白質やミトコンドリアに関する蛋白質で興味深い結果を得た.
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今後の研究の推進方策 |
現在は統計解析がほぼ終了し,論文作成中である.今年度は国際学会にも積極的に発表していく予定である.また,今回の研究結果を踏まえて新たな研究計画を立案中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた国際学会への発表が次年度に持ち越されたため,次年度への繰り越し金が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会への発表を2回予定している.
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