研究課題/領域番号 |
15K20946
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
瀧本 彩加 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (40726832)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 向社会行動 / 心理メカニズム / 共感的反応 / 他者理解 / ウマ |
研究実績の概要 |
本研究では、向社会行動を示す動物種 (フサオマキザル・ウマ) を対象に、向社会行動とそれを支える心理特性を被験者内要因で実験的に検討する。個体差に着目した検討を行うことで、向社会行動とそれを支える心理特性間の相関関係を把握する。また行動指標だけでなく生理指標も測定することで、行動の解釈の妥当性を高めるとともに向社会行動の動機づけにも迫る。一連の研究から、向社会行動を支える心理メカニズムを明らかにする。加えて、異なる動物種において同一の研究手法を用い、結果を直接比較することで、向社会行動の進化の道筋の解明にも寄与する。本年度はウマを対象とした2種類の実験を実施した。第1に、共感的反応に関する実験的検討を実施した。具体的には、ウマにおいてヒト(未知)のあくびが伝染するかを調べた。ウマに心拍計を装着し、安静時の心拍数に安定したところで、ウマの前にヒト実験者(未知)が立ち、5分間等間隔であくびを呈示する (テスト条件) か、ただ口を開けるのを呈示した(コントロール条件) 。ウマのあくびの回数と心拍数を条件間で比較したところ、どちらについても条件間で有意な差が見られなかった。この結果は、未知のヒトのあくびはウマに伝染しないこととウマに緊張をもたらさないことを示している。第2に、他者理解にかんする実験的検討を実施した。具体的には、ウマがヒトの表情の情動価を理解するかを調べた。ウマをヒトの表情刺激(笑顔・真顔・怒り顔)が貼られた実験馬房に誘導し、5分間の行動を分析した。表情刺激を探索した時間については、怒り顔条件で笑顔・真顔条件でよりも有意に短い傾向が示された。また表情刺激を探索した回数については、怒り顔条件で笑顔条件でよりも有意に少なく、真顔条件でよりも有意に少ない傾向が示された。これらの結果はウマがヒトの怒り顔のネガティブな情動価を理解していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飼育下のウマを対象とした実験研究は、北海道大学馬術部や東京大学馬術部の協力を得て、予定どおり進めることができた。また、ウマを対象とした研究には、現在も継続してデータを収集・追加している観察・実験研究やデータ分析中の実験研究が複数あり、来年度以降も興味深い研究成果を報告できる見込みが立っている。フサオマキザルを対象とした実験研究についても着実に準備を進めているところである。よって、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
飼育下のウマの研究は、北海道大学馬術部や北海道大学北方生物圏フィールド科学センター耕地圏ステーション静内研究牧場・東京大学馬術部の協力を引き続き得て、これまで通り推進できる見込みである。また、フサオマキザルを対象にした研究は、京都大学大学院文学研究科の藤田和生教授の協力を得て、先方の研究室で実施させていただけることになっており、スムーズな研究開始が見込まれる。
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