既に樹立済であったウサギES細胞を用いて最適化した培養条件において、新規にウサギES細胞を樹立した。樹立したES細胞に赤色蛍光を呈する蛍光色素であるtdTomatoを恒常的に発現するベクターを導入し、蛍光標識した。また、tet-on BCL2を導入した株も作製した。 このようにして作製したウサギESC株を用いてマウス着床前胚とのキメラ形成実験を行ったところ、tet-on BCL2導入群においてのみ、低頻度ではあったが、E6.5-E7.5において赤色蛍光を呈するウサギESC由来細胞の生存が確認された。すなわち、ウサギーマウスキメラ胚の形成が確認された。ただし、多くのウサギESC由来細胞は胚体外組織に分布しており、より発生の進行した段階でのウサギーマウスキメラ個体の出現頻度は著しく低いと考えられる。実際にE8.5以降ではウサギESC由来細胞が胚体に寄与したキメラは得られていない。 マウス胚においてBCL2発現誘導によるキメラ形成促進効果が認められたことから、次にウサギ着床前胚をホストとしたキメラ形成実験を行った。E1.5胚(8細胞期-桑実胚期)に移植し、E9.5(マウス胚のE8.5に相当)にて解析したところ、低頻度ではあったが赤色蛍光を呈するキメラ個体が得られた。移植細胞は胚体に寄与していたことから、さらに発生を進めれば最終的にはウサギESC由来キメラ成体が得られる可能性がある。BCL2発現誘導により細胞死を阻害することで、非ナイーブ型のES細胞でもキメラ形成できることが明らかになった。
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