研究課題/領域番号 |
15K20954
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榎本 豊 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (20608210)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | NK細胞 / IL-4 |
研究実績の概要 |
近年、肝疾患の患者が増加しており、その多くの疾患に関わる免疫反応の機序を解明することが求められている 。本研究では、Th2免疫応答の作用機序の解明を目指し、Th2サイトカインであるIL-4の肝臓特異的な過剰発現を行い、定常状態のNK細胞とは性質の異なるNKが肝臓内で顕著に増加する現象を見出した。このIL-4応答性NKは定常状態のNKよりも高い増殖性、高い細胞傷害活性、特徴的なサイトカイン産生を示す細胞であり、従来考えられていたNKに対するIL-4の作用とは大きく異なっている。本研究では、このIL-4応答性NKの生理学的意義を解明し、IL-4による未知の免疫制御機構を明らかにすることを目的とする。 生体内において、どのような細胞がIL-4応答性NKに分化するかを明らかにするため、定常状態のNK、及び未熟なNKをそれぞれIL-4過剰発現マウスに移植した結果、そのどちらもがIL-4応答性NK同様の形質を獲得した。さらには、IL-4受容体欠損マウス由来の定常状態のNKをIL-4過剰発現マウスに移植した結果、IL-4応答性NKの形質は獲得しなかった。このことから、IL-4応答性NKに分化するには、NK自身がIL-4のシグナルを直接受容することが重要であることが明らかになった。 また、消化管寄生虫であるNippostrongylus brasiliensis感染モデルにおいて、IL-4応答性NK様のNK細胞が増加することが確認された。今後は生理学的条件下において、IL-4応答性NKがどのような役割を担っているかを明らかにしていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を実施するにあたり、実験に必要な機器や実験系の多くが構築されていたことから、首尾よく実験を進行することが可能であり、おおむね実験は順調に推移した。
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今後の研究の推進方策 |
IL-4が発現されるとされる寄生虫感染モデルにおいて、Th2免疫反応時のIL-4応答性NKの役割を解明する。具体的には、寄生虫感染モデルでNK細胞を除去したり、IL-4応答性NKを移植したりすることで、その役割を明らかにしていく。また応用として、IL-4応答性NKのがん免疫療法への有効性を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文を投稿中であるが、まだ受理されていないため、投稿料がまだ計上されていない。また、民間の団体から旅費の補助が一部でたため、その分の予算がかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在論文を投稿中であり、受理されたらその投稿料に充てる。また、得られた研究成果をより広く公表するため、積極的に学会などで発表し、その旅費に充てる。
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