研究課題/領域番号 |
15K20958
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
勝沼 聡 早稲田大学, 付置研究所, 助手 (90593202)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エジプト / 開発原病 / 医療・衛生史 |
研究実績の概要 |
本研究は、20世紀前半のエジプトにおける医療・衛生事業の具体相の解明と、同事業に対して地方社会が示した反応・対応について検討することを目的としている。平成27年度は、主に下エジプトを中心に当時展開されたと思われる医療・衛生の具体相の解明に資する資料収集と分析に重点を置いて作業を進めた。 年度末に行ったロンドンでの調査では、当時のエジプト政府刊行の各種報告書を閲覧・複写したほか、国立公文書館では本研究に関係するイギリス政府の公文書を閲覧・複写した。結果、収集した史料からは、主にマラリアやビルハルツ住血吸虫症といった、当時の地方開発の進展に伴い感染が拡大した疾病に対し、当局が講じた対策(媒介生物の駆除や住民に対する啓蒙活動の推進など)に関する情報を得ることができた。特に、対策の実施を支えた関連する諸立法について手がかりを得ることができたことは、医療・衛生の制度化に関する当時の政府の構想を知る上で重要な成果であった。一方、対策の実施を担った組織の詳細、あるいは啓蒙活動で用いられた広報物の詳細など、より具体的な情報については入手することができなかったため、今後もその把握に努めたい。 また、本年度は海外で開催された国際会議に2度参加(10月にトルコ・アンカラ、11月にアラブ首長国連邦・アブダビ)した際、海外の医療・衛生史研究者と交流する機会を得ることができ、近代中東に関する医療・衛生史研究の最新動向や多くの研究上の示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、医療・衛生の制度化の実態を明らかにすることを目的としていたが、これまでに収集した資料にはその点に関する記述・情報が期待されたほどには得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、基本的には当初の計画通りに研究を進める。ただ、制度化の実態解明に資する情報が想定通りに集まらない現状が継続した場合、平成29年度に予定していた地方社会における医療・衛生問題に関して当時の知識人が展開した議論の分析に重点を移すことも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定したより二次資料の収集が進まなかったほか、一次資料を購入する機会も得られなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き、関係二次資料の収集に努めるので、そのための費用に使用するほか、一部は旅費として使用する。
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