研究課題/領域番号 |
15K20958
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
勝沼 聡 慶應義塾大学, 文学部(三田), 准教授 (90593202)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エジプト / 開発原病 / 医療・衛生史 |
研究実績の概要 |
平成28年度も、平成27年度に引き続きエジプト地方社会における医療・衛生の制度化の実態解明を目指し、関連史料の収集を中心に作業を進めた。 年度末に行ったロンドンでの調査では、国立公文書館において平成27年度に実施した調査では閲覧できなかった同館所蔵の関係史料を閲覧・入手した。具体的には、第一次世界大戦中のエジプト内務省報告の公衆衛生に関する部分と、1930年代末に設置された社会問題省の発足後10年間の活動に関する報告書である。 まず、当該内務省報告については、通説では19世紀末以降エジプトを実質的な統治下に置いたイギリスは、20世紀以降エジプト地方社会への関与を強化しようと試みたものの、大戦の勃発により短期間でその試みは頓挫したとされている。ただし、大戦の勃発が地方社会における医療・衛生事業におよぼした影響の詳細は未だ明らかにはなっていない。そのため、同報告の記述からその詳細を把握できれば、医療・衛生の制度化過程の一端が明らかになると期待している。次に、社会問題省の活動に関する報告書については、20世紀前半における医療・衛生事業は基本的には公衆衛生省の所管とされていたものの、地方社会の改革が社会問題省の主な所管業務の一つとされていたことから、同省が地方社会における医療・衛生事業に一部関与した可能性がある。その意味で、当該時期の同省の活動に関する報告書は、本研究の進展に役立つことが期待される。 また、エジプトをはじめとする中東地域に加え、近代のインドや中国など他地域における医療・衛生の制度化について論じた先行研究を積極的に収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も医療・衛生の制度化の実態を明らかにすることを目的としていたが、当時の政府刊行物から得られる情報が、当該制度の概要の域を出ず、制度化の詳細な展開を把握することが困難な状態が続いたため。
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今後の研究の推進方策 |
地方社会における医療・衛生の制度化の実態解明が概要の把握にとどまっている現状をふまえ、今後は当該問題に関して当時の知識人が展開した議論の分析に重点を移す予定である。まず、国内所蔵のアラビア語雑誌収録の関連記事を閲覧・収集したうえで、必要に応じ国外所蔵の雑誌を参照し、その欠を補うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
関係する文献の購入費が想定より低かったほか、本務校における業務との関係で、出張期間を短くせざるをえなくなり、旅費が想定より低くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた次年度使用額の大半は、本研究の作業に使用するパソコンの購入費にあてることを検討している。
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