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2015 年度 実施状況報告書

光活性化PEG脂質を用いた、迅速かつ一細胞単位の多種細胞パターニング技術の開発

研究課題

研究課題/領域番号 15K20963
研究機関東京大学

研究代表者

山平 真也  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員 (70750652)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードPEG脂質 / ケージド化合物 / 多種細胞パターニング / 血中循環ガン細胞 / 光応答性化合物
研究実績の概要

複数種類の細胞を、種類ごとに望みの位置に配置する技術は、次世代の細胞研究において強力なツールとなる。そのような多種一細胞パターニングを可能とする分子として、PEG脂質の細胞固定化機能を余剰の光分解性脂質でケージングした光活性化PEG脂質を開発した。本研究では、その表面修飾条件の探索や、駆動原理の解明、有用性を示すアプリケーションの実施等を目的とした。
まず、本年は光活性化PEG脂質の接着性細胞への応用を行った。これまで、接着性細胞が基板への接着等の細胞活性を示すコラーゲン表面では、光活性化PEG脂質表面が構築できていなかった。そこで本分子のコラーゲン表面への修飾条件を検討したところ、反応溶液中に30v/v%以上のDMSOを混和することで、光活性化PEG脂質/コラーゲン表面を構築できた。また、本表面では、光パターニングされた接着性細胞が、接着・伸展等の活性を示すことが観察されている。
次に、本分子の駆動原理の解明の為に、PEG脂質がどのような分子でケージングされるか、分子のスクリーニングを行った。その結果、PEG脂質に短鎖脂肪酸や一般的に吸着阻害分子として知られるPEGを結合させた時は、PEG脂質の細胞結合機能はケージングされなかった一方、長鎖脂肪酸や疎水性化合物を結合させた時には、ケージングがなされた。したがって、本分子の駆動には、分子の疎水性が大きく寄与することが示された。
最後に、実用的なアプリケーションとして、血中循環ガン細胞(CTC)の単離を行った。まず、坦ガンマウスから採取した末梢血中のCTCを抗体により蛍光標識した。これを光活性化PEG脂質表面に播種し、顕微鏡観察により検出したCTCを光固定し、基板表面を穏やかに洗浄したところ、数万以上におよぶ目的外の細胞はすべて基板上から除去され、数細胞のCTCのみが基板上に単離された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでの研究において、まず、平成27年度の目標の一つである、非接着性細胞・接着性細胞共に利用可能な光活性化PEG脂質表面の構築を達成した。コラーゲン表面上に構築した光活性化PEG脂質表面を用いることによって、接着性細胞と非接着性細胞の共パターニングだけではなく、接着性細胞とリポソームといった生物と無生物といった全く異なる性質を持つ物体の共パターニングにも成功しており、本分子の強力な汎用性が確認されている。また、光活性化したPEG脂質のブロッキング剤として有効な物質も探索されており、ブロッキング剤を用いることで、パターニング間のコンタミネーションの少ない7細胞集団からなる共パターンの構築がなされた。一方、本分子の駆動原理の理解においては、駆動に必要な因子が解りつつあるものの、駆動メカニズムの直接的な解析については今後の課題として残っている。しかし、次年度の目標としていた、光活性化PEG脂質の有用性を示すアプリケーションの実施においても、CTCの単離という形で達成しており、本研究は非常に順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

これまでに7種類の細胞群のパターニングに成功しているが、より多くの細胞群のパターニングには、個々の細胞のパターニングに必要な時間の短縮が必須となる。現行の実験操作において、時間短縮が可能と思われる作業として、PEG脂質の光活性化があげられる。PEG脂質表面は、共焦点顕微鏡に標準装備されている405 nmレーザー光を使用し、ROI (Region of Interest - 関心領域観察機能)を用いた光パターン描画により活性化している。現在のPEG脂質に含まれている光分解性基では、細胞固定化表面に変化するのに数分/mm2の光照射時間を要してしまう。そこで、405 nmの光への応答性が高い分子を光活性化PEG脂質の合成に用いることにより、光活性化にかかる時間の短縮を図る。そのような新規光分解性基の探索方法として、ニトロベンジル型光分解性基を骨格とし、鈴木・宮浦カップリングによりコンビナトリアルに光分解性基ライブラリーを作製する方法を用いる。すなわち、ニトロフェネチル基の光応答性に影響があることが解っている4位に、市販されているボロン酸誘導体をカップリングすることにより簡便に種々の光分解性リンカーを調製し、その中から目的に適う化合物を用いて光活性化PEG脂質を合成する。上記の様な方法で、より多くの細胞種がパターニングされた細胞チップを作製し、ハイスループットな細胞動態の解析に用いる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] Photosensitizer and polycationic peptide-labeled streptavidin as a nano-carrier for light-controlled protein transduction2015

    • 著者名/発表者名
      K. Minamihata, Y. Maeda, S. Yamaguchi, W. Ishihara, A. Ishiwatari, S. Takamori, S. Yamahira and T. Nagamune
    • 雑誌名

      J. Biosci. Bioeng.

      巻: 120 ページ: 630-636

    • DOI

      10.1016/j.jbiosc.2015.04.001.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Turn on型PEG脂質表面の開発と複数種細胞の光配置技術2016

    • 著者名/発表者名
      山平真也,山口哲志,長棟輝行,
    • 学会等名
      日本化学会第96春季年会
    • 発表場所
      同志社大学 (京都府京田辺市)
    • 年月日
      2016-03-27
  • [学会発表] 光活性化 PEG 脂質の開発と、複数種細胞の光配置技術2016

    • 著者名/発表者名
      山平真也,山口哲志,長棟輝行,
    • 学会等名
      化学工学会第81年会
    • 発表場所
      関西大学 (大阪府吹田市)
    • 年月日
      2016-03-14
  • [学会発表] Collagen surfaces modified with photo-cleavable polyethylene glycol-lipid for versatile single-cell array available for both non-adherent and adherent cells2015

    • 著者名/発表者名
      Shinya Yamahira, Satoshi Yamaguchi, Masahiro Kawahara, Teruyuki Nagamune,
    • 学会等名
      Pacifichem 2015
    • 発表場所
      Honolulu, Hawaii, USA
    • 年月日
      2015-12-18
    • 国際学会
  • [学会発表] Single cell array on photo-cleavable PEG-lipid surface for high-throughput cell imaging analysis2015

    • 著者名/発表者名
      Shinya Yamahira, Satoshi Yamaguchi, Masahiro Kawahara, Teruyuki Nagamune,
    • 学会等名
      YABEC 2015 Symposium
    • 発表場所
      韓国 春川
    • 年月日
      2015-10-16
    • 国際学会
  • [産業財産権] 脂質膜含有物を固定化するための化合物、当該化合物で修飾された基材、当該基材上に脂質膜含有物をパターニングする方法及び脂質膜含有物を当該基材上で単離する方法2016

    • 発明者名
      長棟輝行、山口哲志、山平真也
    • 権利者名
      東京大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2016/57852
    • 出願年月日
      2016-03-11
    • 外国

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公開日: 2017-01-06  

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