研究課題/領域番号 |
15K20964
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
合田 隆 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50733648)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 準モンテカルロ法 / 高次収束 / 対称変量法 |
研究実績の概要 |
平成27年度は以下の2点について研究を進めた:
(1)滑らかな関数に対して最適な積分誤差収束レートを達成するような準モンテカルロ法の存在証明と明示的な構成(ニューサウスウェールズ大学の鈴木氏・芳木氏との共同研究):はじめに、ある決定的に構成された点集合に対してランダマイゼーションを加えた時にその平均平方積分誤差が最適な収束レートを達成することを示し、これによって最適な収束レートを達成するような準モンテカルロ法が存在することを証明した(IMA J. Numer. Anal.に掲載予定)。続いて、一様分布性の高いChen-Skriganov点集合やDick-Pillichshammer点集合の構成法や証明法を深化させることによって、滑らかな関数に対して最適な積分誤差収束レートを達成する準モンテカルロ法の明示的な構成法を2つ示した(論文2報を学術雑誌に投稿中)。
(2)分散減少法として知られる対称変量法の準モンテカルロ法への応用:対称変量法は通常のモンテカルロ法に対して広く用いられてきたが、決定的なアルゴリズムである準モンテカルロ法に用いた場合にどのような効果が得られるのかはほとんど知られていなかった。本研究では、対称変量法を用いない場合には滑らかな関数に対して高次収束を達成できなくても、対称変量法を用いることによって高次収束を可能にすることがある、という結果を理論上でも数値実験上でも示した(J. Comput. Appl. Math.に掲載、関連する内容がUnif. Distr. Theoryに掲載予定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
滑らかな関数に対して”ほぼ”最適な積分誤差収束レートを達成する準モンテカルロ法はすでに知られていたが、”真に”最適な収束レートを達成できることを示したのは本研究成果が初めてである。また、存在証明だけでなく明示的な構成法を与えられたことから、実践性まで兼ね備えた結果を得られたと考えている。加えて、部分的とは言えども、高次収束を達成する準モンテカルロ法の新しい構成法として、対称変量法を用いることの有効性を示せたことは、今後の更なる進展の足掛かりになることが期待できる。以上から平成27年度は当初の計画以上に進展したと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度から引き続いて、高次収束を達成する準モンテカルロ法の新しい構成法を模索する。また、当初の計画以上に進展したことから、平成29年度以降に実施することを計画していた研究テーマを前倒しして開始する。具体的には、関数の滑らかさに対して自己適応性を有する点集合の構成法(もしくは探索アルゴリズムの構築)、ならびに積分誤差を統計的に評価するための適切なランダマイゼーション手法の確立について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は高次収束を達成する準モンテカルロ法についての理論的研究が大きく進展したため、大規模な数値実験による実用性の検証は翌年度に実施することとした。このため、計算機環境や各種開発ツールの整備に使用する予定だった経費が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
大規模な数値実験による実用性の検証を行うこととし、未使用額はそのために必要な計算機環境や各種開発ツールの整備に充てることとする。
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