研究実績の概要 |
昨年度および一昨年度に確立した"extrapolation polynomial lattice rules"をベースとして、準モンテカルロ法へのリチャードソン補外の新たな応用可能性について模索した。これまでに知られる高次準モンテカルロ点集合の明示的構成法はJosef Dick氏による"digit interlacing"と呼ばれる方法のみであったが、各点の2進表現に高い精度が必要となるという課題があった。今年度の研究によって、リチャードソン補外を用いることによって、この2進表現に要求される精度を大きく削減できることを証明した。数値実験上でもその効果を確認し、一連の成果をIMA Journal of Numerical Analysisへ投稿、受理された。
研究期間全体を通じて、高次準モンテカルロ法に関する以下の代表的結果を示した。1) 滑らかな被積分関数に対する誤差収束の最適性の証明、2) 多項式格子則に基づく点集合の構成法(特に、リチャードソン補外の応用)、3) 古典的格子則へのテント写像の応用と理論。また、工学的応用として「部分完全情報の期待価値」という指標の推定に準モンテカルロ法を用い、従来よりも大きく計算コストを削減できることを経験的に示した。
本研究課題に対する以上の知見(特に1.の理論的内容)について、RICAM Special Semester "Multivariate Algorithms and their Foundations in Number Theory"で招待講演を行い、解説論文としてまとめた("Recent advances in higher order quasi-Monte Carlo methods", arXiv:1903.12353)。
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