研究課題/領域番号 |
15K20977
|
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
森脇 愛子 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (50573557)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム / 仲間関係 / 発達支援 / 過程志向 / 児童期 |
研究実績の概要 |
本研究は、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:ASD)の児童における親密で適応的な仲間関係の構築に至る過程を明らかにすることを目的として、ASD児と仲間との相互作用の時系列変容とそれに関連する要因を検討する。当該年度は、新規の研究参加児のリクルートのために協力病院との調整を開始した。またその間に、ASD児のアセスメントセットおよび相互作用の変容過程を調べる行動解析方法の改良作業を行った。特に行動解析では、ASD児の相互作用をPI(Positive Interaction)、NI(Negative Interaction)、LLI(Low-level Interaction)の3指標で捉え、インターバル記録により生起頻度を算出する手続きを明確にした。これによりセッション内/セッション間で行動量の時系列分析が可能となり、さらに2人組のデータ比較から相互作用の特徴やバランスといった仲間関係の質的変容の情報が得られると考えられた。この過程志向的な行動解析法を用いて2人組×2ペアの自由あそび場面15セッションを対象に分析を行った。その結果、時系列変化からは、セッションの初期には一時的に相互作用が減少傾向にある(平行遊び期がある)こと、LLI生起は比較的維持されやすく、増加のタイミングはペアで連動することが認められた。またペア内の比較では生起行動タイプの安定性とバランスの変動が見られ、ASD児の仲間関係の構築過程におけるターニングポイントと、その際の支援を考える鍵となることが示唆された。 これらの成果は日本発達心理学会大会および同学会発達障害分科会で発表した。またアセスメントに用いる『子どもの強さと困難さアンケートSDQ』の日本語版標準化に関する資料を雑誌に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規の研究参加者をリクルートして、ASD児ペアによるセッションを開始するというH27年度当初の予定であったが、協力施設との調整作業に時間を要したため進捗がやや遅れ、またアセスメントセットおよび行動解析方法の改良作業を行ったために、計画を一部修正して新規リクルートをH28年度に繰り越すこととした。当該年度中には、H27年度までに筆者らの支援プログラムに参加した対象児の同意を得て、自由遊び場面の記録VTRを用いた相互作用の行動解析を行うことができた。その結果、評価方法としての実用度を確認することができたとともに、解析により仲間関係構築の過程を把握する鍵となる有用な成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
協力施設との調整を進め、新規の研究参加者(ASD児)を対象にペアのセッションを開始する。時間的な制約のために当初の計画で予定していた参加者数の確保が難しくなることが懸念されるが、アセスメントの効率化とペア・セッションの日時を調整する予定である。アセスメント結果およびセッション中の行動解析は随時行い、データベースを完成させる。ペア毎の相互作用の時系列変化についての追跡的な分析とともに、一定期間のセッションが完了したペアにおいては比較分析を進める。加えて、H27年度中に得られた結果について学会等で発表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に予定していた新規参加者のためのアセスメント情報の回収および行動解析に充てていた分に未使用額が生じた。これらの作業を28年度に繰り越して実施するため、未使用額を経費に充てる。
|
次年度使用額の使用計画 |
新規研究参加者のためのアセスメント情報の回収および行動解析に係る費用、およびデータ入力や分析補助に係る人件費として使用する。また国内学会および国際学会に参加し発表する。
|