これまで絵画史において和様化を論じられる際には、主に能動的な「取捨選択」に意識が持たれてきた。本研究では作画の場における学びと技の伝達という側面を重視し、日本の仏教絵画と宋代絵画にみられる技術的差異に注目した。実技の教えは、肝心の部分は口承伝達や言外の感覚の共有によることが多いため、工房、師弟関係のような技能を相承される「場」がある場合と、入手した請来絵画や粉本といった「手本」に学び作画する場合とでは理解に差が生じる。本研究は絵画制作における実技の継承という新たな視角を提示し、技法材料の分析から、それぞれの技法の特質と絵画観を捉えたものである。
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