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2015 年度 実施状況報告書

藻類におけるアブシジン酸シグナル伝達機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K20985
研究機関東京工業大学

研究代表者

小林 勇気  東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (80644616)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード植物ホルモン / アブシジン酸 / テトラピロール
研究実績の概要

植物ホルモン・アブシジン酸(ABA)の藻類における機能やシグナル伝達機構における知見は少ない。そのため、進化的なABA獲得の背景は謎である。申請者は、最も原始的な植物である紅藻Cyanidioshyzon merolae(シゾン)にもABAが存在し、細胞周期を停止させることで高塩濃度環境での生存性を高めていることを明らかにしている。しかし、ABAシグナル伝達機構は不明である。本研究ではシゾンにおけるABAシグナル伝達機構を明らかにすることを目的とし研究を行った。申請者はシゾンゲノム解析の結果から、シゾンでも高等植物と類似したABAシグナル伝達機構を持っているのではないかと、仮説を立て証明を行った。本研究では1)高等植物でABAシグナル伝達の中心的役割を果たすPP2C・SnRK2によるABA伝達機構の生化学的な証明、2)ABA受容体の探索、3)転写因子の特定、4)プロモーターの同定と機能解析、5)モデルの検証、の5つの小目標を置き研究遂行を目指している。上記5つの内、1, 3, 4について、27年度で一定の成果を得ることが出来た。1)シゾンには4種のPP2Cと1種のSnRK2が存在している。これらのアンチセンス株と過剰発現株を作製しABA応答する遺伝子を指標に、ABA応答が不全になったものを選別した。その結果、PP2C2, PP2C3とSnRK2がABAシグナル伝達に関わっていることが明らかになった。3)ABA応答型転写因子候補遺伝子に対して、アンチセンス株を作製したところ、bZIP2のアンチセンス株でABA応答が阻害された。このことからbZIP2がABA応答型転写因子であることが示唆された。4)bZIP型転写因子はヘテロダイマーを形成して転写制御を行っていることが知られている。そこで4種すべての組換えbZIPタンパク質を精製し、ABA応答しているTSPO遺伝子プロモーターへの結合を確かめた。bZIP1とbZIP2の組み合わせでのみTSPOプロモーターへの結合が確認できた。また、同様の方法で結合領域を特定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では1) PP2C・SnRK2によるABA伝達機構の生化学的な証明、2)ABAレセプターの探索、3)転写因子の特定、4)プロモーターの同定と機能解析、5)モデルの検証、の5つの小目標を置き研究遂行を目指している。上記5つの内、1, 3, 4について、27年度で一定の成果を得ることが出来た。これらの成果は、藻類でも高等植物と非常に類似した機構によってABAシグナル伝達が制御されている事を示している。27年度の成果によって、ABAシグナル伝達に必要なコア因子の内、受容体以外の因子は同定できたと考えられる。さらに成果の一部を論文化し発表することも出来た。上記の理由から目的の達成度は6割以上と考えられ、研究目的に対する本年度の進捗状況は概ね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

27年度の成果によりABA受容体以外のコア因子は特定することが出来た。28年度はABA受容体の探索を中心に、ABAシグナル伝達に関わる各因子の相互作用を詳しく検証していく。ABA受容体の探索に関しては、質量分析による探索を行ってきたが、細胞内で発現量の多い特定のタンパクがノイズになり良好な結果が得られなかった。これを打開するため、ノイズになるタンパクの抗体を作製し、抽出液から除くことで検出感度を高め同定を行う予定である。また、モデルの検証として特定した因子に関してはtagを付加した形質転換体を作製した。タンパクレベルでの発現量の測定や免疫沈降のために抗体を作製したが力価や特異性の面で良好な抗体が得られていなかった。そこでゲノム上の遺伝そのものをtagとの融合遺伝子に置き換えた形質転換体を作製した。従来はゲノムに新たに挿入することでtag融合タンパク質を細胞内で発現させていたが、遺伝子ごと置き換えることが可能になった。これにより、特異的な抗体を作製しなくてもタンパク量の定量が行えるようになった。また、内在性タンパクとの競合もなくなり、より正確な実験を行える。tagによる免疫沈降やリン酸化の検証を行い、生化学的な各因子の性質を詳しく解析する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Abscisic acid participates in the control of cell-cycle initiation through heme homeostasis in the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki Kobayashi, Hiroyuki Ando, Mitsumasa Hanaoka, Kan Tanaka
    • 雑誌名

      Plant Cell and Physiology

      巻: 57 ページ: 印刷中

    • DOI

      doi: 10.1093/pcp/pcw054

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Construction of a URA5.3 deletion strain of the unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae: A backgroundless host strain for transformation experiments.2015

    • 著者名/発表者名
      Keiko Taki, Toshiyuki Sone, Yuki Kobayashi, Satoru Watanabe, Sousuke Imamura, and Kan Tanaka
    • 雑誌名

      The Journal of General and Applied Microbiology

      巻: 61 ページ: 211-214

    • DOI

      http://doi.org/10.2323/jgam.61.211

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Functional analysis of ABA in Cyanidioschyzon merolae2016

    • 著者名/発表者名
      Yuki Kobayashi, Hiroyuki Ando, Mitsumasa Hanaoka and Kan Tanaka
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学年会
    • 発表場所
      盛岡 岩手大学
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] Functional analysis of nitrogen responsive small G protein CmRAB5 in a unicellular red alga Cyanidioschyzon merolae2016

    • 著者名/発表者名
      Tokiaki Takemura, Yuki Kobayashi, Keiko Taki, Sousuke Imamura, Kan Tanaka
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学年会
    • 発表場所
      盛岡 岩手大学
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] 紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおけるアブシジン酸の機能2015

    • 著者名/発表者名
      小林勇気、安藤洸幸、華岡光正、田中寛
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸 ポートアイランド
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] 単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae(シゾン)の遺伝子改変ホスト株の分離2015

    • 著者名/発表者名
      瀧景子、曽根俊之、小林勇気、渡辺智、今村壮輔、田中寛
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸 ポートアイランド
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
  • [学会発表] Cyanidioschyzon merolaeにおける細胞内小胞輸送タンパク質CmRab5の機能解析2015

    • 著者名/発表者名
      竹村時空、小林勇気、瀧景子、今村壮輔、田中寛
    • 学会等名
      第14回微生物研究会
    • 発表場所
      川崎市 明治大学 生田キャンパス
    • 年月日
      2015-10-31
  • [備考] 原始紅藻シゾンでアブシシン酸が機能―植物ホルモン獲得のルーツを解明―

    • URL

      http://www.titech.ac.jp/news/2016/034858.html

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公開日: 2017-01-06  

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