今年度は主にスペクトラル法の性能評価とNMF計算アルゴリズムの開発を行った. (1)標準的なスペクトラル法,つまり,K平均法を利用するスペクトラル法の理論性能に関する研究成果を論文にまとめてジャーナルに投稿した.査読者から良い評価を得た. (2)凸計画に基づくスペクトラル法の論文を査読者のコメントに従って修正した.提案手法はwell-clusteredなグラフに対して厳密にグラフのk分割を求めることができる.しかし,既存研究との関係が不明確であった.そこで,既存研究の結果と比較できるように提案手法が有効に動作するグラフの例を構成し,論文に反映した.近傍グラフを作成するとき近接点の個数を指定する必要があるが,論文では近接点の個数が小さいときの実験結果について言及していなかった.それに関する実験を実施し結果を論文に追加した. (3)NMFを計算するための高速アルゴリズムを開発した.これまでに数多くのNMF計算アルゴリズムが提案されているが,その中でも階層的交互最小二乗法は計算時間において優れていることが知られている.この手法は行列を一列ごとに更新していく.これを一般化して二列ごとに更新する手法を設計した.一回の更新に必要な計算量は提案手法と階層的交互最小二乗法はほぼ同じである.ベンチマーク問題を用いて数値実験を実施し提案手法の計算時間を調べた.多くの場合,提案手法の方が短い計算時間で良質なNMFを計算できることを確認した.
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